応援コメント

第1話 幻想的なハードウェア」への応援コメント

  • ばんばんキャラクターが増えていくのに、「えーとこの人だれだっけ」ってならない。小手先の技術では作り出せない構成力の妙を感じる。

  • 最後の台詞、ガロウさんとリョウさんの対比がつらいですね……。
    リョウさんとアヲイさんの関係にユーヒチさんが後から割り込んで来た、みたいな台詞があるんですが、ウソ記憶の内容を知っている読者からすれば、リョウさんこそがユーヒチさんとアヲイさんの仲を引き裂こうとしているようにも解釈できますね。その上、ガロウさんの「女に金を出させるバカ」とか「いっぱい飲む女の子」みたいな台詞、もしこれをユーヒチさんが言っていたら何倍にも増して咎めそうなのに、アヲイさんへの恋心を思い出して苦しくなるような地雷発言がないかぎり何も言わないのが、この人の思考はほとんどアヲイさんで占められているんだろうな、と感じて、いいな、と思いました。Twitterで最初に拝読したとき、リョウさんのこと、やたら他人に突っかかっててこの人怖いなとも思っていたんですが、読み進めるにつれて、また今回読み直してみて、ユーヒチさんが夢の中で出会った猫のように、威嚇して、牙を剥くことはできるけれど、実際本気で戦うことになったら完膚なきまでに叩きのめされるんだろうな、って弱さを感じて、初めと違ってかなり同情しながら読むことができました。彼女、めっちゃ不利な立場で、この世のほとんどがアヲイさんに対する恋の成就を阻んでいる状況なのですが、幼馴染としての立場のせいで、まるでアヲイさんの恋人のような距離でいなければならないんですよね。絶対叶わないのに、叶った後の夢ばかり見させられるのつらいですね。
    私は多分、もしリョウさんみたいな立場に立っても同じような、けなげに周囲を威嚇するような行動はとれないでしょうし、彼女より外聞に囚われているのであまり共感はできないんですが、それでもなお、この作品は「そうせざるを得ないよな……つらい……」という印象を読者に与えます。
    なんで、この第一話にそういう力があるか考えてみたんですが、端的にいうなら「描写の仕方が適しているんだろうな」と思いました。この作品、簡潔で直截な文体の割に地の文では明確に感情が書かれていないんですよね。むしろ、台詞で「思わずこぼれてしまった」感じだとか、「この台詞を言うってことはそういうふうに考えているんだろうな」っていうのを思わせるやり方で、主観的に登場人物の心情を辿らせるのではなく、二人称的三人称的に辿らせる。
    登場人物それぞれの意思がぶつかり合う、またはぶつかり合わざるを得ないこの作品においては、だれか特定の人に理不尽に味方するのではなく、淡々と語る書き方がとてもこの作品のすばらしさを高めていますね。もし、読者が登場人物のだれかと根本的に分かり合えないような考え方の人でも、十分にその登場人物のことを思える感じになっていて、これを書ける籠原さんはつよつよだな、と思いました。
    二万字近くの大ボリュームとは言え、第一話の時点で様々な登場人物の視点が用意され、十分に描かれているわけですが、なんだか読んでいてワクワクしますね。これからどうなっていくんだろう、っていう予感が胸の内にせりあがってきて。
    あと、登場人物の名前の付け方、素敵ですね。現実の日本でもあり得なくはない名前に、仮名遣いを変えることによって耳慣れなさを与える。この世界とウソ記憶の世界が重なり合い、互いに浮かび上がるこの作品において、この耳慣れなさは物凄く素晴らしい効果を発揮していると思います。
    この世界における真実を、リアリスティックに描いている感じがあって、いいですね。
    文体も、基礎的な語彙力とか日本語としての自然さがまず第一につよつよなんですが、その上、シンプルながらも、必要以上に削り過ぎることなく、ほどよく圧縮されている感じが素敵です。
    改めて読ませていただきましたが、素敵な第一話ですね。

    作者からの返信

    ありがとうございます。
    リョウとガロウの台詞が対比になっているのは、指摘されて初めて気づきました。
    リョウはこの作品でものすごく辛い立場に置かれていると思います。なんていうか、本当に「最初からアヲイのことを好きだったはずなのにいつの間にか追い越されていた」女なんですね。