第2話 幼馴染のあいつ

「優斗、重いからこの荷物持って。」


「怪力女のくせに何言ってんだよ。」


「はいはい、怪力女で結構、結構。早く荷物持って」


高校の帰り道に毎回おなじみのやり取りをしている。


私のことを女扱いしない、この男は今井優斗。


同じ日に同じ産院で産まれて、ずっと一緒のご近所さん。


家も近いから、高校の行き帰りを一緒にすることも多い。


優斗は一般的にイケメンの部類に分類されるようで、よく色んな女の子に声を掛けられている。


だけど、私の知る限りそんな女の子達と付き合ったことは無い。


イケメンで女の子に人気がある優斗に対して、私は名前からして女か男か分からない上にバスケをやっていて髪の毛はベリーショート。


おまけに背も高く、骨格もごつい。


そんなわけで、優斗には女扱いされていない。


こんな見た目のおかげで優斗と一緒にいても優斗ファンの女の子からも存在を除外されている。


そもそも、鼻垂れ小僧だった頃から知っている優斗のことを今さらどうのこうのとなる関係でもない。


私には密かに憧れている先輩がいる。


明日、高校を卒業したら、その先輩と同じ大学に入学する。


その日が楽しみで仕方がなかった。


「快、大学の入学式どうする?」


「どうするって普通に行くけど。」


「なら一緒に行こうぜ。」


「そうだね、一人で行っても心細いし。それにしても大学まで一緒になるとは思いもしなかったわ。」


「・・・・・・・・・」


「急に黙り込んで、何か変なこと言った?」


「何でもない。今日で高校の帰り道に快の荷物を持つことがないかと思うと、嬉しくてさ。」


「ほんとあっという間の高校生活だったね。大学生活も楽しみだね。大学生になったら、絶対彼氏を作る。優斗も彼女ができたら紹介してね。」


「快の相手ができる男はそう簡単には見つからないと思うけど、せいぜい頑張れよ。」


「上から目線なのがムカつくけど、優斗なら直ぐ彼女できそうだよね。何で今まで彼女作らなかったの?好きな子でもいるの?」


「好きな子?いるよ。」


「へーそうなんだ。誰?私の知ってる人?今度紹介してよ。」


「あぁ、今度機会があったら教えてやるよ。」


優斗と一緒にいることは多かったけど、恋バナをすることはほとんどなくて、この時初めて優斗に好きな人がいることを知った。


なんだか心がもやっとしたような気がしたけど、それは誰が好きなのか気になるだけだ。


「快、大学でもバスケ続けるの?」


「そうだね。先輩もいるし、誘われてるから部活に入ろうかなと思ってるよ。」


「そっか、大学に入ったら、今までみたいに顔を合わせる機会は少なくなるな。」


「そうだね、優斗は経営学部で私は法学部だから授業で会うことも少ないだろうしね。彼女できたら教えてね。」


「そうだな。寂しくなるな。たまには一緒に帰ろうな。」


そう言ってはにかむ優斗の顔が夕日に照らされて、その横顔にドキッとした。

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