第7話いざ、三道大会

三道大会は、弓道、剣道、柔道の3つの構成で、6月の地区大会の前哨戦である。

キャプテンの正樹は、試合に出る一人一人に声をかけた。

「ヒロちゃん、頑張れよ!十射八中を目指せば予選は勝ち抜けるから」

ヒロキは、

「絶対、良い結果だしてやる。見てな、郡山ちゃん」

「そうそう、そんな感じ」

そして、光一にも。

「いいか、光一。甲矢が外れても乱すなよ!自分を信じれ」

「うん。分かった」

光一は甲矢、いわゆる一射目が的から外れると、ペースが乱れ、0中も珍しくない。

2年にも声をかけて行った。

女子は武蔵丸、否、田嶋に全てを任せてある。副キャプテンなのだ。


弓道の試合は団体戦と個人戦を同時に争う。

5人1組で四射を2回、二射を1回。計十射勝負。それで、団体での的中数、並びに個人の的中数で競い合う。

弓道の試合は朝から夕方まで続く。

待ち時間、ウォークマンで曲を聴きながら漫画を読んだり、おしゃべりしたり。

光一は目を閉じて、ウォークマンで何か聴いている。

「光一、誰の曲聴いてんだ?」

光一の耳には、届かない。正樹は右側のイヤホンをはずして、先ほどと同じ事を言う。

「えっ、globe」

「へぇ~。聴かせて聴かせて」

正樹が右のイヤホンで光一が左のイヤホンで曲を聴く。試合中になにしてんだか……。


光一は、周りにバレないように、小さな声でささやく。

「正樹君、もし、僕が十射十中なら、またキスをして!」

「えっ!また?いいよ」

これは、正樹が皆中かいちゅう出来ないと考えていたからだ。

「約束ね」

「うん」

何か、嫌~な予感がしたが、構わずヒロキに近付く。

「ヒロちゃん、何聴いてるの?」

ヒロキは曲を聴きながら小説を読んでいた。


ヒロキは正樹に気付き、

「聴いてみる?」

「うん」

正樹はイヤホンを耳に当てた。

「何これ?オバサンの笑い声ばっかりじゃん。しゃべってんのドリフか?」

「ノンノン、キャプテンはオッサンだな。今、流行りの綾小路きみまろだよ!」

「へ、へぇ~。渋い趣味だね。で、何を読んでんの?」

ヒロキは恥ずかしそうに、これだよ!

「女を虜にする男の、108つの秘技」

「へえ~、試合中にねぇ~」

2年はお菓子食べながら、マンガを読み、女子はたまごっちに夢中。

もう、試合の勝敗は火を見るより明らかなり。だ。


補欠兼マネージャーの中川めぐみが正樹に駆け寄る。

「キャプテン、次はうちの番です」

「どっち?」

「男子です」

「分かった、ありがとう」

キャプテンは自分含めて、4人を会場に引き連れた。


さて、試合が始まった!


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