永遠に捺されることのない悲しみの稟議版を持って父親は県庁を彷徨う

公署の意思決定手段として、普段から活用されている決裁。
今や電子決裁も多いようですが、かつては担当者が、承諾者、決裁者のもとに行って、印鑑をもらうのが通常だったと聞きます。

そんな、一時代前を髣髴とさせる県庁内で、職員で、夏休みに自分の不注意で息子を亡くした父親が本作の主人公。

そんな主人公が、知事決裁を起案します。
専決(知事に代わり知事の権限に属する者が決定を行う)ではなく、知事の承認が必要なくらい大きな案件とは何か。
決裁には知事含め24人分の承諾が必要。各々の承諾者を回るとき、そこで待ち構えていたのは。

時折、現実と幻想とが混同し、さらに自らを苦しめてしまう心情描写がとにかく秀逸。
そして、決裁という日常的な職務に重ねているところにも、作者様の卓越したセンスを感じさせます。

短いながらも、冒頭から感動のラストまで無駄のないストーリー。
公務員であってもなくても、これは必読です!