この展開は、何なの！？（とある受験生のつぶやき）

第１話 図書館！？

　11月半ば、大学入学共通テストまで残り２ヶ月を切った頃。

　彼が通う3年のクラスも追い込みに向けピリピリとした空気に変わっている。

　担任もＨＲで必要な連絡事項だけを伝え、終わりにしていた。

　彼は終了の礼と共に教室を出て下駄箱へ向かう。

　帰宅するか市立図書館で勉強するかを考えならがら下駄箱を開けると靴の上に一通の封筒が載っている。

（何？）

　周りに誰もいないのを確認して封筒を開けると、同じクラスの女子の名前。

　この学校にしては都会的な雰囲気があり、男子の一部からは注目されていた。

『市立図書館で会えませんか？　自習室でお待ちしています』

　何で手紙？　市立図書館に行こうとは思っていたから、まあ良いけど。

　彼は校門を出て市立図書館へ早足に向かった。

　図書館の自習室の奥にいる彼女が小さく手を振っている。

（ほんとに居る！？）

　図書館へ向かう途中『この手紙は誰かの悪戯（いらずら）？』と思いながら歩いていた。

　目の前に彼女が居て無視する訳にもいかず、普通を装い奥へ歩いて行く。

　隣の席まで来ると、彼女は嬉しい表情を隠さず、指で席を指し示す。

　ココに座れと？　自習室は私語厳禁だから喋らないの？

　彼女が指した椅子に座り、問題集を出そうとすると、彼女の細い腕が彼の腕を止める。

（！？）

　思いも寄らぬ彼女の行動に、彼は固まり彼女の顔をじっと見てみた。

　今まで同級生としてしか見ていなかったが、改めて近くで見ると目鼻立ちが整い、カワイイと言うより美人さん。

　固まったままの彼の前にノートを広げ大きな文字を書き始める。

『〇〇大学受験するよね？　私も受験するの』

　僕の志望校を知ってるの？　誰かに話したっけ？

　とりあえず頷くと、彼女はノートに続きを書く。

『良かった。ホントよね？』

　首肯すると、彼女がまたノートに書き始める。

『合格したら、東京で一緒に暮らそうよ！』

「エェー！」

　大声を上げて立ち上がると、図書館員から騒ぐなら出て行くように注意され、ペコペコ謝りながら席に座った。

　どうした？　何があった？

　戸惑っている彼を気にせず、彼女はノートに何かを書き始めた。