異世界転生エルフ、世界最強を目指す。

鏡つかさ

1章

転生先は森の中(1-1)

 僕は目を覚ますと、

 

「・・・え?」

 

 妙な違和感を覚えさせた。

 

 どこまでも広がっていく蒼い空。

 聞いたことのない動物の鳴き声。

 

 途方もなくそびえ立っている幾つかの巨木。

 そして鼻孔を強く刺激する自然の匂い。

 

 周囲を見回して居場所を確認する。

 どこかの森の中にいるようだ。

 

 しかしなんで、自分がこんなとこに?

 と、そう思った瞬間、『今の世界』の記憶が蘇ってくる。

 

 どうやら僕が前世の記憶を持ったまま別の世界に転生したようだ。

 

 名前は・・・マティアス。

 120歳のハイエルフだ。

 

 そしてここ──この森は〈魔の森〉とそう呼ばれている。

 どうやら僕が100年間ずっとここに住んでいるようだ。

 

 ◇

 

 明るさと太陽の傾き具合、それから気温などを考えると、時刻は午後4時頃ではないだろうか。

 まあ、ここに長居するつもりもないし、とりあえず移動しよう。

 

 とそう思い、1歩前へ足を踏み出すと、バシャという音とともに足が濡れているような感覚があった。

 

 足元を向くと・・・流れるような金色の髪が視界に入ってくる。

 空に匹敵するような蒼い瞳がキラキラと輝き、頭からはみ出している、長く尖った耳が妙な音を聞く度にぴくぴくと動いた。

 

 水溜りに映った自分の容姿を見ると、僕は呆気にとられた。

 

 これが、僕なのか?

 めっちゃ美少年になったけど?

 

 身長もやや高く、恐らく178センチもありそうだろう。

 ファンタジー系のゲームでよくあるような黒革の鎧を身に纏っている。

 

 背中には木製の弓があり、後ろ腰には矢が数本入った矢筒までも括り付けていた。

 

 もしかしてだけど・・・

 

「【ステータス】」

 

 この世界はゲームに似てるので、ゲームみたいに【ステータス画面】とかもあるかな。

 なんてことを思って、試しに【ステータス画面】を言ってみると、〖ステータス画面が開きました〗、というメッセージとともに、脳裏になにかが浮かび上がった。

 

 

 名:マティアス

 種族:森上妖精(ハイエルフ)

 職業:未定

 冒険者ランク:未知

 レベル:1

 HP:50/50

 MP:500/500

 筋力:10

 耐久:10

 敏捷:20

 魔力:25

 器用:20

 幸運:20

 《スキル》

 ブレードスキル:≪現在、ブレードスキルは取得していません≫

 ショットスキル:〖弓術 Ⅱ〗〖狙撃:Lv1〗〖オーバードロー:Lv1〗〖パライズショット:Lv1〗〖鷲の目:Lv1〗

 魔術スキル:〖魔法全属性操作〗〖治療:Lv1〗〖光:Lv1〗

 特性スキル:〖錬金術:Lv1〗〖鑑定:Lv1〗〖索敵:Lv1〗

 パッシブスキル:〖体力自動回復〗〖魔力自動回復〗〖異世界言語完全習得〗〖アイテムボックス〗

 称号:なし

 

 

 やはりあった。

 

 視界に入ったのは、RPGなどによく出てくるようなステータス画面だ。

 一見して、パラメーターの数値は大体平均的だとわかる。

 いや異常なのは、MPの圧倒的な多さだ。

 

 MPとは魔法や一部のスキルを使用する際に消費される魔力量。

 HPだって50しかないのに、初期レベルでMPは500ってどういうこと?

 

 辻褄が合わない。

 

 もしかして、エルフだからこんな魔力量の多さ?

 その可能性は……まあ、なくはないが。

 よくゲームなどでエルフという種族は魔法が得意って印象が強いからね。

 

 それに、スキルのこの圧倒的な数。

 まじでスキルの数は・・・とにかく多い。

 幸いなことに、名前を見るだけで大体のスキルの効果は判断できる。

 

 でもやはりその効果が判断できるとはいえ、気になるスキルが結構あるという事実に変わりはない。

 【錬金術】とか【魔法全属性操作】とかな。

 

 それでも今現在僕が一番気になっているスキルを強いて言うのなら、じゃあこの【アイテムボックス】と呼ばれるやつだろうな。

 

 もしかして・・・

 と、そこで脳裏に意味ありげな言葉が現れる。

 

 これを詠唱すればスキルの記述が見えるかな。

 そう考えつつも、試しに、

 

「【記述画面、開け。対象スキル〖アイテムボックス〗】」

 

 そう言ってみる。

 すると、

 

 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 アイテムボックス 特性/ランク10

 説明:手に入るあらゆるアイテムを無限に収納することを可能にするスキルだ。アイテムボックスに収納される物には消費期限がないので、生肉とかも保存することが可能。

 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 

 案の定、【アイテムボックス】の記述画面が開かれたのだ。

 

 なるほど。

 全く僕が察したことと同様だな。

 

 【アイテムボックス】に収納される肉とかは腐らないとは思っていないが、よく考えれば別におかしいことではない。

 このアイテムボックスとやらは大体のゲームで使用されるインベントリーみたいなものだから。

 

 と、そんなことを思いつつ、鳴いている野生生物によってやっと今自分がどんな状況に置かれていたのか思い知らされる。

 

 ・・・そうか。僕が異世界に転生したんだ。

 突然過ぎてどう反応すればいいかは正直に言ってよくわからない。

 こんなことってある?

 

 とはいっても、実際あったからそりゃあるよなぁ。

 だって、普段現実に表示されるわけがないものが突然表示されるようになったし。

 あとついさっきほどまで自分の部屋にいたのに瞬きひとつで突然森の中に移動させたしな。

 

 自分から言わせれば十分な証拠だ。

 

 ラノベやアニメ、概ねフィクションの中にしか存在しないはずの現象なのに、自分がいま、ここにいるってことを考えれば、やっぱ異世界転生しか思い浮かべない。

 

 ・・・まあ、考えてもしょうがないか。

 せっかく異世界に転生したし、思う存分に楽しもう。

 

 と、そんな軽い気持ちで、僕は再び周囲を見回す。

 周囲は、僕が見たことの無い動物が豊富なのだ。

 

 ・・・いや。それはちょっと違うなぁ。

 今自分の周りには何もいないから。

 

 もしかして、これもスキルの効果か何か?

 もう一度【ステータス画面】に目を通す。

 

 そして・・・

 

「……これか?」

 

 とあるスキルを発見した。

 【索敵】という名のスキルなのだ。

 

 きっとこれなんだろうな。

 

 【索敵】の記述を確認しなくてもその効果がもうわかるが、念には念を入れて、ね。

 

 とまぁ、そんな感じで僕は、

 

「【開け、記述画面。対象スキル〖索敵〗】」

 

 と、記述画面を開く為に唱えてみる。

 

 そうすると【索敵】の情報が書かれていた画面が目先に現れる。

 

 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 索敵 特性/ランク1

 説明:ある範囲内にいる全ての敵の気配を察知するスキルだ。ランクを上げることにより、察知できる範囲が大きくなる。

 現在の察知範囲:1キロメートル

 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 

 そしてその画面には僕が思っていた情報が書いてあった。

 けっこう便利そうなスキルだな。

 

 もしかしてこれを使えば、僕の位置から何メートルも離れているだけでなく、具体的に敵の正体まで教えてくれるかな。

 とりあえず試してみようか。

 

 そう決めると、目を閉じ、意識を研ぎ澄ます。

 そうすると、さっきと同じように脳裏にとあるコマンドが顕現する。

 

 なるほど。

 これが詠唱か。

 随分と簡単そうだな。

 

「【発動。対象スキル、索敵】」

 

 と、唱える・・・

 ふむ。これが魔物の気配か。

 

 どうやら【索敵】が教えてくれるのは、魔力反応の位置と、大きさだけのようだ。

 まあ、便利ということに変わりはないけどな。

 

 近づくのもあれなんだけど、この世界の生き物はどうなっているか正直に言ってかなり気になるところなんだ。

 

 見てみる?

 どうせ暇だし、見てみようか。

 

 そう決めると、〖索敵〗を頼りに、僕は歩き出した。

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