第四回 御近所から始まる、お付き合い。


 ――束の間の距離。歩きながら見る冬の星座も、ほんの束の間だった。



可奈かなのお家って、こんな近くだったの?」


「そうね、御近所の内に入るのかな? う~ん、守備範囲には入ってるかも」


 と、言うくらい、僕のお家から近かった。梨花りかのお家も近いとはいえど、可奈のお家よりも遠く、距離は倍くらい。徒歩で三、四分の距離……ドラッグストアの裏手の、一軒家で新築っぽいお家。徐に可奈はドアを開けつつ、「さっ、入って」と促した。


「お邪魔します」と僕と梨花、ここでも息はピッタリで、合唱を遂げていた。


 すると台所、そこには「まあ、本当にソックリね、お二人さん」と、颯爽たるお声を頂いた。「可奈から聞いてるよ、梨花ちゃんと千佳ちかちゃんね、いつも可奈のこと、仲良くしてくれてありがとうね」……と、可奈のお母さんと対面。つまりは初対面で、何というか逞しさを感じるの。そして、何となくだけれど、僕のお母さんに……似ているような気がしたの。何処と言われたら、回答に困るけれど、噛み合うの、フィーリング。


 弾む会話の最中、差し出された赤い狐と……

 僕は緑の狸なの。梨花は赤色を選んだの……


 三分と五分のコラボ……待ちに待つの、程よく解れた心と同じように麺も。おだしが食道を通るも何とも言えない温かさ、懐を温める。とてもとても美味しく……


「二人とも……

 とくに千佳かな、そんなガッツかなくても……よっぽどお腹が空いてたんだね」


「千佳、美味しいね」「うん」


 ……温かさにせいかな? 涙が出てきちゃって……記念に残る味。僕の五臓六腑にまで染みわたる程の歓喜。皆で囲む食卓は、こんなにも温かかったの? と、思えるの。お家でボッチだったことも、お母さんの帰りを寒さ堪えて待っていたことも、忘却され。


 そうなる程に、可奈のお母さんの笑顔が、とっても温かかったの。


 そんな渦中にあって、インターホンが響いたの。――そう。その尋ね人とは。



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