本書を読むうえでの留意点

 本書は、ロナーテ・ハアリウへの報告として、サレが記したものである。

 自身の内心や登場する人物の言動につき、赤裸々に書かれているが、外部の者が読むことを考慮して、必要な配慮はなされている。

 本書には、サレの置かれた立場や主観を極力排する努力の跡が見られ、史家が「短い内乱」について語る際の重要な史料と位置付けられている。

 しかしながら、当然、立場や主観を完全に取り除くことはできていない。自身やスラザーラ家と対立した者に対する評価については、その点を差し引いて考える必要がある。逆に、サレと昵懇の間柄であった、近北州執権ウベラ・ガスムンなどについては、その功績が強調されており、他の史料で確認できる行動の少なくないものが、その記述から外されている。

 すべての史書に言えることだが、本書についても、書かれている理由、書かれていない意図について考えることが肝要である。

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