幕間 四

 その光は、しばらくの間止むことはなかった。あまりの眩しさに、わたしたちは目を瞑り、光が止むのを待つ。


 しかし、目を瞑っていても。直接この目で見なくとも分かる。


「……やりましたっ! 倒せましたよ、八坂さんっ!」


「……みたいね。正直、あんなのを一撃で倒した――だなんて、信じがたいけれど……」


 しかし、一瞬ではあるが――確かに、コアが砕けるのを見た。そして、連鎖的に、他のコアを砕けていった。それは何より、辺りを照らすこの虹色の光が証明している。


 一体、何秒経っただろうか。何十秒かもしれない。それとも、分単位の時間が既に経っているのかもしれない。とにかく、しばらくの時間が過ぎた後――光は次第に止み、わたしたちはその目を開ける。


「……い、いない……っ!」


 どの方角、周囲のどこを見渡しても。さっきまで、確かにこの場所に鎮座していたその巨体だったり、色とりどりのコアなんかは見当たらない。本当に。一度は絶望さえ感じた、あの敵を――倒すことが出来たのだ。


「や、やったわ……っ!」


 遅れて、もう一人の魔法少女――標識を操り、あの攻撃を受け止め続けていた氷乃ひのさんもこちらへ飛んでくる。


「……無事、倒せたようですね」


「ええ……! これも、みんなのお陰よ……。決して、私一人じゃ……それも、の私じゃ、倒せなかった。みんな、本当に……ありがとう」


 八坂やさかさんが、初めて――涙を見せた。強大な敵を倒したという事実はもちろんだろう。が、それ以外の様々な感情も、ざっと押し寄せた故に……。


「これで、この街のみんなを守り切ることが……できたんですね……」


 わたしは、空から――都市伝説の元凶となった『命岐橋』を見る。ネガエネミーに操られ、今にも、橋に足を掛けて――飛び降りようとする人がいる。


 その後ろに並び、次は自分だと、その時を待つ人もいる。その後ろには、さらに多くの人々が――今か今かと待ち続ける姿があった。


 でも、そんな人たちを……この手で助けられた。失われてはならない命を、救うことができた。その事実に、わたしはホッと胸を撫で下ろす。


 もちろんこの仕事に報酬なんてものはない。……強いて言うならば、魔法少女にとっての報酬であるコアは――自分たちで全て壊したのだから。


 しかし、それでも。わたしたちにとって得られたものは大きかった。ネガエネミーに奪われようとしていた人々の命を助けることができた。魔法少女としての使命を全うできた――それだけで、戦った甲斐があったなと……そう思う。




 そんな、勝利の余韻に浸るわたしたちに向けられたのは――




 ……暗く。


 ……冷たく。


 ……突き刺すような。


 ――たったひとりの声が木霊する――



「よくも私の…………命岐みわかれ橋を――壊してくれたわね」


 その声で。場の空気が一瞬にして、冷たく、真っ黒に――凍りつく。

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