幕間 二

「なあ、もし――

 半分の確率で欲しいモノが全て手に入る代わりに、もう半分の確率で自分の持っている全てを失う……

 ――そんなチャンスが巡ってきたら、どうする?」


「なんだそれ。『全て』って、具体的になんだよ?」


「お金とか、形のあるモノはもちろん、地位とか名声とか、見えないモノも含めてだな。

 半々の確率で、全てが手に入るか、全てを失うか」


「ふーん。もしそれが俺なら、間違いなく受けるだろうなぁ。彼女だっていねーし、貯金だってねーし、これからずっと、平凡な人生を送るくらいならなあ……一発逆転の可能性に賭けるのもアリだな、ははっ」


「でも、失敗したら『命』以外の全てを失うんだ。金だって家だって、それどころか今ある人間関係だって、積み上げてきた信用も、それこそ全部」


「……そう言われたら躊躇っちまうなあ。――ってか、何の話だよこれ」


「『都市伝説』だよ。ほら、今、ネットで流行ってるやつ」


「お前なあ……。いい歳した大人が何の話をしているのかと思いきや、都市伝説って……こういうオカルト的なの、信じるクチだっけか?」


「いや、読みモノとして純粋に面白いと思ったんだけどな。……おっと。そろそろ昼休みも終わるし、さっさと食い終わってくれよ」


 世間的にはお昼休みで、多くのお客さんでごった返す――鳴繰市の街中にあるとあるラーメン屋にて、スーツ姿の、ごくごく普通のサラリーマン二人が談笑している。


 一見、何の変哲のない、日常の中のひと会話に聞こえるかもしれないが……それさえも、の描いたシナリオ通り――なのかもしれない。

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