第5話 欲望の化身

 私は彼の願いに抗えなかった。試合があるたび、疲れた彼は私に懇願した。私は「ホイミー」を連呼した。そして交わった。交わるたびに彼の持続力が強く増してくるのがわかった。彼はセックスのあと眠らなくなった。「ホイミー」への耐性だ、そう思った。


 初め一度きりだった絶頂が、二度三度くりかえされるようになった。嬉しかったのかもしれない。怒った彼に私は様々な体位で貫かれた。そのたびに泣いて許しを乞いながら頂点を迎えた。


 彼と私はお互いを舌なめずりあい、お互いの淫らな汁にまみれながら抱き合って呻きあった。「ホイミー」をくりかえすたび、私たちの欲望はより肥えてふくらんでいった。それは私たちの手に負えないくらいに膨張していった。見あげるほどに大きく育っていた。私たちは気づくのが遅すぎたのだ。



 セックスとよぶのが憚れる行為だった。


 私は彼が好きだった。彼と見つめ合ってキスして、彼に抱かれるのが幸せだった。それで充分だった。でも彼はちがった。


 彼は私を抑えつけ、明かりを点けて恥ずかしい姿勢を晒させた。そしてそのすがたをスマホで写真におさめた。だれもいないからいいよね、そう言っていたはずなのに、あるときから、私たちのホテルでの逢瀬のさなかに知らない男がすがたを見せるようになったのだ。


「ホイミー」と諳んじるのが嫌だった。疲れた彼をただ癒したかっただけだった。私は彼になんども懇願した。あなたが好きだから、あなただけの私でいてほしいと。じゃれ合ってたころの私たちに戻りたいと。でもそれは本音ではなかったのかもしれない。


 私は知らない男たちをくちで愛撫させられた。全身を弄ばれ、なんどもなんども貫かれた。そしてフラッシュがたかれた。私は「ホイミー」を拒むどころかじぶんから発現させていた。力尽きた男たちをくりかえし奮い立たせた。怖かった。逃げ出そうと思った。逃げて警察に駆け込めば助けてもらえる。でもムリだった。心が縄で絞められてベッドに括りつけられているようだった。


 心が逃げろと訴えても、淫らな体が男を求めて叫んでいた。体が欲望を抑えこめなくなっていた。知らない男をくわえて愛撫するのは嫌だったけど、先端から付け根まで舌を這わせ、大きくなったそれを口いっぱいに頬張りたくてしかたなかった。私はもう私ではなかった。嫌なはずなのに、心も体も熱く湿って渇望するのだ。

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