Take46 あのさ

「陸、起きて」


いつもの始まりに目をこする

起き上がった僕

ベッドの端に

蒼温が座った


「あのさ、陸、話あるんだ」


「何?」


「倒れたの俺のせいだごめん」


ごめん?いや違うよ


「きちんと話してなかった」


何を?


朝日はまだ僕らを完全には捉えない


「彼女の話、あれ嘘だから」


は??


「うちさ父さんが再婚して」


離婚の話も聞いてないよ?

……!


「新しい母さんに街を案内してて」


おいおい……


「見かけたやつが変な噂立てたみたいで」


僕は朝日が足りずにぽかんとしてた

幼馴染みの真剣な話だっていうのに

漫画でも読んでるみたい


「だからごめん」


謝るの違うだろ

って思ったけど

何も言えず固まる


「離婚、再婚勝手かよ」


そう言うと蒼温は床にすとんと落ちてった

落ちってったのは

たぶんだけど

微かな雫も


「早く言えよ… そんな大事な事」


僕は少ない朝日混じりに一言

幼馴染みの大事を知らずに倒れた自分が情けなくて

拾えなかった雫の重さを感じながら


あのさ

蒼温

あのさ

あのさ



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る