第34話

「試験って毎回緊張するんだよね、シアちゃんは全然そんなことないみたいだけど何か秘訣とかあるの?」


「そんなことありません、ですがショウ様の事を思うと自然と力が湧いてくるんです。ノーフィさんもそうではありませんか?」


「そうか……そうだよね、ありがとうシアちゃん!じゃまたねショウ君!」


「それでは私も失礼しますね、ショウ様、私が1位になりましたらお約束をお願いしますね」


 試験直前、2人が嬉しい事を言ってくれる。


 でも、約束って何でもお願いを聞くって話だったよな……


「まぁ、俺がトップ通過すればいいか」


「任せてマスターますたー


 そして試験開始の鐘。


「さて、まずは近くにいる……うおっ!?」


 遠くで巨大な竜巻と大滝が突然現れると、ゴールドクラスの生徒を映す鏡が一気に割れて行く。


 残ったのは数枚、誰なのかは見えないからわからないが……


「わかる、今のはヒスイとマリ」


 やっぱりそうだよな。


 開始数秒でゴールドクラスをほぼ殲滅、ブロンズクラスの試験の時よりも見違えるほどに強くなっている。


 これも擬人化した魔罪武器の力か。


 感心していると宙に浮いた鏡はいつの間にか3枚になっていた。


 つまり……

 

「ショウ様!」

「ショウ君!」


 それじゃあ、ちょっとはカッコいい所を見せるとするか。


「ラピスとコーラルも先輩として負けられないな」


「当然だけど」

「先輩は強い」


「シアちゃん、今は協力だよ!」


「わかりました!挟み撃ちです!」


 遠距離からノーフィの放つ無数の矢が、そして近距離でシアの神速の刺突。


 矢はシアに当たることは無く、完璧とも思える連携を昨日で仕上げて迫って来るのは流石だ。


「どうですか!私達もやる時はやるのですよ!」


「ますたー、このくらい私達ならいける」


 そうだ、きっとラピスとコーラルなら2人を倒せるかも知れない。


 そう思い、俺は瑠璃珊瑚剣を


「まさか、私達に勝ちを譲ると言うのですか!?」


「ショウ君!私達が女の子だから手加減するってことなの!?」


 手加減?そんな訳無いだろ?

 ただ俺も試したくなっただけだからな。


 俺は右手で左手首を掴む。


「ショウ様?一体何を……」


 物にモテるスキル。


 それが全ての物に通用するなら、使はずだ。


 ラピスコーラルに頼らず俺自身が強くなれるなら、試してみる価値はある。


 ただ一つ不安があるとすれば、自分自身が自分自身を好きになる、つまりそれは……


 そして、俺はその不安を抱えたまま、そこで意識を失った。



 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る