12th December

「よかろうよ、グリフォンは貴殿をどうやら気に入ったようだ。相棒が認めた者であれば、ワタシは喜んでその者を通そう。それがこの扉の鍵、〝同意〟である」


 そう言うとウミガメモドキは、どたりと音を立てて扉の向こう側に降りていった。


「案外すんなりといったねぇ、うさぎさん」


 ゴロゴロと喉を鳴らしながら、まだ門の柱の上に座っているグリフォンが言った。


「キミはまだまだ若い、卑下しているわけではないよ、私達だってそうさ昔はまだまだ青二才だったさ。まだキミは絶望してしまうには早すぎるよ」

「気に入った者と話し込むのは構わぬが、グリフォンよ、鍵は開けたのだから扉を開けてはくれまいかな、はたしてはたして」

「わかったわかった、今いくよ」


 そう、楽しそうにこちらからは姿の見えないウミガメモドキに返事をし、グリフォンもその扉の向こう側へと、バサリと舞い降りていった。

 なるほどなるほど。この大きな二体のキメラが、鍵を外した後に全力で内側から同時に押さないと、この巨大な石の扉は開かないらしい。

 軽い砂埃と、ズザザザー、サー、ザッザ、という音を立てながら、扉はゆっくりと開いた。


「うさぎさんの将来に幸あれ。コレを持ってお行き、私の羽だ。何かもしあったらここを通った証として見せるといいよ」

「ありがとう、グリフォン、ウミガメモドキ」


 キラリと光った羽の中には、時計のかけらが光って見えた。




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 ブギーマンがやってくる

 闇夜につられてやってくる

 悪い子はだぁれ 怖がったのはだぁれ

 なきむし よわむし いくじなし

 皆みんな ブギーマンの大好物

 お城のバラは青ばかり

 深紅の兵士はまっぷたつ

 ブギーマンがやってくる

 悪い子みんな たべちゃうぞ

 うそつき 首をちょんぎるぞ

 よい子は迎えにきてあげよう

 真っ暗まっくらな ブギーマンのおうち

 よい子は連れて出てあげよう

 さあ怖がれ おそれるがいい

 ブギーマンの舞う夜に






 この国の王家には、代々予言の力があると伝えられてきた。

 しかし、本来はそうではない。王家の者だけが、予言を伝える聖獣と会話をする能力があったのである。


 東と西の最果てに、一角獣ユニコーンと黄金の獅子ライオンが降り立ったという。

 それからほどなくして、王の元に一角獣ユニコーンからのお告げがやってきた。


『生まれてくる赤子は双子だ。双子の片割れが女児であったならば、その者を王とし、私を祀るがよい。その者の生きる間、私がこの国に絶対の加護を与えよう』


 しかし、それと同時に黄金の獅子の使者がこの国に現れる。


『生まれてくる赤子は双子だ。双子に女児が産まれたのならば、その者を生贄として我に差し出せ。さすれば王と王子の生きる間、この王国を我が守護しよう』


 そして、生まれてきた赤ん坊は、見事に双子の男の子と女の子だった。

 王は悩んだ。いづれかを選べど、聖獣同士の争いにも発展しかねないからだ。

 そこで王は考えた末、産まれたのは双子の王子だったと国中に公表した。


 事実を知っているごく僅かな者には重い箝口令を敷き、二人を育てることにした。

 そうして何年も、二人の王子の事が国内外に漏れることは無く、王国は平穏を保っていた。


 そう、ブギーマンが現れるまでは――。

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