悪魔

水月七瀬

悪魔

丁度、深夜の電車が走っていた。その日に限って雨が降っていた。雨脚は次第に強くなっていた。雨に濡れた猫を男はじっと見ていた。男は、雨に濡れたまま立っていた。男は、何かを叫んでいた。雨の音と風の吹く音に掻き消され、男はその場で座り込んでいた。男の髪は白髪頭で顔は、窶れていた。男の手には、人間の目玉を持っていた。男は、手に持っている目玉を突然食べ出した。男の服には大量の血が付いていた。男が現れた場所は、新宿歌舞伎町の廃ビルだった。男の中で女の両方の目玉を指で抉り取り、そして、女をスパナで殴り殺した。男は煙草を吸おうとポケットの中を探した。女に声をかけ今日はついている。久しぶりに女と話した。数十年前になる。男はある女のことを思い出していた。女はこういった。「私のことを愛している人物は貴方しかいない。貴方にとって私は都合のいい女なの?」

男の脳裏にその言葉だけが浮かんでは消えての繰り返しだった。

瑞希は過去に男からもらった指輪を探していた。瑞希は渡した相手からもらった指輪を警察署に持って行った。「この人を探して欲しい。私にとって大事な人だから。瑞希は、対応した警察官に運転免許証を見せた。警察署に訪れた私のことを誰にも言わないで」

持ち主の名前は、乙原輝。警察署に来たのは瑞希と名乗る女だった。瑞希は、乙原の許嫁である。近々結婚式を挙げる予定であると話した。「乙原が何故突然いなくなったのか?」

その理由が知りたいと瑞希ははなした。瑞希が、新宿警察署に来たのは、噂によると乙原が立ち寄ったとされる最後の場所と人から聞いたと言う。乙原の特徴は、眉毛が太く、無精髭をはやしており、体格は太っていると言うことだった。警察官に顔写真は無いかと聞かれると乙原は、あまり写真を撮らせたがらなかったと言う。唯一撮ったのは運転免許証だけだった。「乙原が最後に立ち寄った場所が何故警察署だったのか?」

そこが気になって仕方がなかった。乙原は、あまり感情を表に出さない。穏やかな男だった。何かを見たのか。乙原は、あまり人のことを気にしない男である。乙原は、感慨深いものだったのかもしれない。乙原は何を思ったのだろうか。その後の足取りは掴めていない。瑞希に楢崎は、こう告げた。

「もしかしたら事件に巻き込まれているかもしれません。安心してください。必ず捜し出します」

瑞希は、動揺していた。瑞希に楢崎は落ち着くように説得した。瑞希は楢崎のいう言葉を信じるしかなかった。瑞希は楢崎の言葉を聞くと嗚咽を漏らした。楢崎は瑞希の姿を横目で見ながら、警察署の中に入って行った。瑞希は、楢崎の言葉を信じ、警察署をあとにした。

今から遡ること数十時間前。その時は晴れていた。背が高く髪が長い赤いハイヒール履いている女が歩いていた。顔は端正な顔をしており、女が歩くと周りの人達は振り向いていた。女の後ろには女の顔を見ていた男達が群がっていた。男達は美しい脚を見せられた。女は気にすることなくただ前を向いて歩いていた。後ろには大勢の男達が女のあとを追っている。そんな時だった。1人の男が女のまえに現れた。女の表情は、変わらない。ただ、男は後ろから来ている男達が気に入らなかった。

「何か言いたいことでもあるのか?いちいち五月蝿いだよ。いい大人が!」

そう言った男に女は礼を言うと女は何も言わずに足早に去って行った。男達は、ぶつぶつと言いながら去って行った。男達とは、別の男が女を見ていた。男は、女がどこへ行っているのか気になっていた。男は、悪意を剥き出しにしている形相をしていた。男にとって女は火遊びのようなものだ。

「飽きたらすぐに捨てればいい」

それが男の世界の考えかただ。女は尽くす女の方がいい。男心にその方が萌えてしまう。男が守りたくなるような女。その方が萌えてしまう。女っていうのはその気にさせる女の方が好きだ。男の心を惑わす。どこかに惹かれりミステリアスな女の方がいい。

「女ってそう言うもんだろう?」

男は世の中の男達に言いたかった。世の中にはたくさんの男達がいる。

「俺は俺のモットーを貫く」

男は女性に対して好意的だった。

「全て俺の女である。男は俺一人だけだ」

男は好みの女を見かけると声をかけてしまいたくなる。男心は日によって変わってしまうものだ。女心と秋の空と言うが男だっておなじた。男に当てはまらないと言う見解がおかしな話だ。

「男は女が大好きだ」

男はそう考えていた。

「好きになって何が悪い。恋は誰でもする。叶うとは限らない。そう言う恋もあってもいいじゃないか?」

男は女と言う者はそう言う見解だった。

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