再び北へ(12月23日分)

フランの目的と秘密を知ってから、俺は彼を手伝うと決めた。

水を向けるとすぐに相談が始まったので、彼もそのつもりだったようだ。

なにしろ途中で稼ぎながら旅する俺と違って、フランはいつも自腹だ。

俺に彼のような知識は無いが、目的さえ分かっていれば少しは調べものも出来る。


フランが今一番気になっているのは、旅の途中で聞いたドワーフの事らしい。

気まぐれに人間と交流しにやって来るが、北東の山のどこかに住んでいる、という事しか分からないそうだ。

だが彼らの作る物は珍しいものばかりで、医療も独自のものがあるかも知れないという。

なかなか面白そうな連中だ。


それに加えて、北には妖精の噂があるそうだ。

妖精も昔はたくさん居たらしいが、今は全く見かけない。俺も見た事がない。

だが北のとある場所には、人を寄せ付けない妖精たちが住む森がある、と言われているそうだ。

運が良ければ彼らに出会えるかもしれない、と言うフランの顔には期待がこもっていた。


そんなわけで、また北への旅に出ることになった。

季節は夏の始めだ。今のうちに移動しないと、北の夏はすぐ終わる。


俺は必要な服を全てつくろい、フランからは使えそうな薬草類や茶、それに連絡用の鳥を預かった。

街で携帯食を探していると、たまたまサフが見つかったので、それも買った。

旅というのは目的があると、準備すら楽しいものなのだ。

これも新しい発見だった。

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