白山熊と魔法灯(12月11日分)

北へと向かう荷車にぐるまは、初めて見る動物に引かれていた。

体じゅうが白い毛に覆われた、鳥のような頭に熊のような太い足をしている生き物だ。

翼はあるがとても小さく、飛べるようには見えない。

北では「白山熊しろやまぐま」と呼ばれている生き物だそうだ。


見た目は肉食動物のようだが、白山熊は草や木の実しか食わないという。

ただし気性きしょうは荒いので、気に入らない相手が近付くとつつかれるそうだ。


試しに頭をでてみろと商人に言われ、やってみることにした。

すると俺は平気だったが、フランは頭突ずつきする勢いでつつかれそうになった。

「そこまで嫌われるのは珍しいな」と商人は大笑いした。



明日には次の国、ハラドに着く予定だ。

だが今夜の宿に旅小屋たびごやに入ると、妙な灯りを見つけた。

ぱっと見は普通のランタンだが、火が燃えている様子はなく、光だけが宙に浮いていて、手を近づけても熱くない。

首をかしげていると、フランが「魔法灯まほうとうだよ」と教えてくれた。


大陸の北東の山にはドワーフ族という、人間の半分くらいの背丈せたけの種族が住んでいるそうだ。

山を掘ってその中に国を作って暮らしていて、最近人間に発見されたという。

彼らは手先がとても器用で、不思議なからくりをたくさん作るらしい。

この魔法灯もその一つで、魔法使いでなくても魔法の灯りをともせる道具だという。


説明しながらも「北には謎が多いんだ」と目を輝かせるフランは、いつになく学者っぽく見えた。

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