エルフとの交易(12月4日分)

昼前にセラムに到着した。

報酬を受け取り、宿を探そうと考えていると、ビィーリャに呼び止められた。

どうせなら荷の受け渡しの場まで見て行け、という事だった。

宿は手配してくれると言うので付いて行った。


大陸の西は大きくえぐれたような形で、その先の空にエルフの住むという浮上大陸がある。

その抉れたところにあるのがセラムで、陸の端は断崖絶壁だ。


受け渡しの場は白い塔だった。

天井から真っすぐ光が差し、その先に荷物を置くと、荷物が消えて、代わりに報酬の品らしい荷物が現れた。

正直拍子抜けした。エルフが空から降りてくるんだと思っていた。

「これがエルフとの交易さ」とビィーリャは苦笑した。


交易はうまくいった様子だが、獣人たちの顔は晴れなかった。

あんな魔法は初めてで驚いたが、そんなに落ち込む事なのか、よく分からなかった。

外に出た獣人たちは断崖の縁に向かった。


「君たちは懸命な種族だ。彼らと違って」

俺の隣に立ったビィーリャは、いきなりそんな事を言った。

その目は浮上大陸を睨むように見ていた。


「誰だって生きるのには懸命だ。この交易は妙だが、エルフだって懸命に生きているんだろう」と俺は答えた。

すると獣人たちはとても驚いた顔をした。それから急に声を上げて笑い出した。


「やっぱり君は懸命だ」とビィーリャは言ったが、その目は穏やかだった。

他の獣人たちも晴れやかな顔になって、俺はホッとした。

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