賭場(12月2日分)

俺には特に旅の目的がない。

向かう先も決めていないが、一つ所に留まる気もない。

なので色々と物入りだが、妙な大金が入ったので、賭場で遊ぼうと少し金を余分に持って出掛けた。


酒場や賭場の多い界隈かいわいに行くと、フランに出くわした。

妙に緊張した顔をしていて、気になった俺は声を掛けた。

「金に困ってるなら博打ばくちはしない方がいい、尻の毛まで抜かれるぞ」

と言うと「どうしてそんなこと分かるんだい!?」と驚かれた。

学者先生がこんなとこにいたらすぐ分かる、と答えると泣きそうな顔をされた。


学者の資金というのは案外少ないらしい。

それで宿代が払えなくなり、移動費用も払えそうになくて賭場に来たと言う。

俺は持って来た金を貸すことにした。

返すのはいつでもいい、元々妙な金だから使ってくれ、と言うと抱き付かれた。


メシを食う金くらいしか残らなかったので、近くの酒場に寄った。

そこでは店の真ん中でキージャという盤上遊戯ボードゲームをしていた。

遊びではあるが、本格的な模擬戦をするものだ。

役割に分かれた数種類の駒、資金と食料、天候と時刻の要素がある。

正直俺の頭ではついていけない。


だがフランは興味津々だった。

じっとゲームの進行を見つめて動かず、熱心に手帳にメモまで取っていた。

俺は酒とつまみを頼んで、フランが飽きるまで付き合った。

帰る頃には丸い二つの月が高く昇っていた。

酒のせいか、不思議といい気分だった。

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