第13話 花粉症対策グッズでスマイル

Side:ショウセイ


 街に着いた。

 さて、どうしよう。

 宿を取るにも勝手が分からないな。

 ゲーリーさんに手配を頼めば良かったか。


 まずは腹ごしらえだ。

 露店で何の肉か分からない串肉を買う。

 香辛料が高価なだけあって味付けはハーブと塩だ。

 でも、意外といける。


 俺を羨ましそうに見ている女の子がいる。

 着ている物もみすぼらしいし、貧しい家の子かな。

 何か食べ物を出してやっても良いが。

 金は余っているから串肉を買ってやろう。


「食べなよ」


 俺は女の子に串肉を差し出した。


「慈悲は受けない、ずびっ。物乞いじゃない、ずびっ」

「小父さんはね。笑顔を糧に生きているんだ。笑顔がないと生きていけない。そういう病気なんだ」

「嘘よね、ずびっ」

「病気は嘘だけど、糧にしているのは本当だよ」


「じゃもらう、ずびっ」


 女の子は串肉を食べ始めた。

 スマイル100円頂きました。


「さっきから、鼻をすすっているけど、風邪かな」

「ううん、この季節になると、こうなるの、ずびっ」


 ああ、花粉症ね。

 花粉症なら、ティッシュとマスク。

 それに薬だ。

 たしか友達が良く効くといってたのが、2300円ぐらいで28日分だ。

 毎日1回、感謝されると元が取れる。


 まあ、別に元が取れなくても良いか。

 ティッシュをまずは出してやった。


「さあ、鼻をかめよ」

「うん」


 女の子は鼻をかんだ。

 そして、マスクを着けさせた。

 薬だが、これは初対面の人が飲めと言っても飲まないだろう。

 さて、どうしよう


「お家に連れてってくれるかな。大人と話がしたい」

「品物のお金を払えって言うのね」

「いや、小父さんは商人なんだが、珍しい物を売っている。それは良いのだが、珍しい物は馴染みがないだろう。だから最初はただで使ってもらって感想を聞く」

「へぇー、そうなんだ」


「大人からも意見が聞きたいんだ」

「分かった案内する」


 案内されたのは孤児院だった。


「初めまして、ショウセイと言います」

「メグが良くして頂いたようで、感謝します」


 スマイル100円頂きました。


「それでですね。メグちゃんの病気に効く薬を持っているんですが、試しに使ってほしい」

「危険はないのですか?」

「俺の故郷ではありふれた薬です」

「そうですか。分かりました。ご厚意に甘えたいと思います」


 花粉症の薬を一瓶出してやった。

 孤児院の人に話を聞いて無事に宿が取れた事も付け加えておく。


Side:メグ

 おかしな人に会った。

 ただで、食べ物を恵んでくれた。

 聞いたら、笑顔を糧に生きているですって。

 きっと寂しい人なのね。

 周りに一緒に笑ってくれる人が居ないのかも。


 貰った、ティッシュペーパーという物はとても便利。

 鼻をかむのは当たり前だけど、テーブルなんかに物をこぼした時に拭いたりも出来る。

 それに一枚取ると、次のが出て来る。

 不思議。

 孤児院の男子なんかがやりたくて、うずうずしてたわ。

 院長が止めたけどね。


 私は必然的にティッシュ係になった。

 ティッシュが必要になると私の所に来る。


「ゴキブリに触りたいのティッシュ下さい」

「私も虫に触るのは嫌。ティッシュを許可する」


「窓を拭きたいの」

「駄目よ。雑巾で十分」

「さっきのゴキブリだって、雑巾で良かったじゃない」

「そうね。次からはそうする」


「もう、しっかりしてよ」

「この季節は鼻が出るし、目もかゆいしで大変なのよ」

「病気じゃ仕方ないわね」


 実はそんなにつらくない。

 ショウセイにもらった薬を飲むようになってから、だいぶましになった。

 マスクは少しうっとうしいけど。


 マスクは他の子にも役に立ってる。

 埃に敏感な子がいて、掃除する時にマスクをすると平気になった。


 ショウセイが訪ねてきた。


「ありがと。色んな品が役に立っているわ」

「ティッシュがこんなに感謝されるとは思わなかった」

「感謝されると分かるの?」


「ああ、糧だからね」


 やっぱり、変。

 ショウセイは変。


「ティッシュは安いから、もう5箱を置いていくよ。バンバン使って構わないから」

「ありがと」


 変だけど、ショウセイは何だか好きだな。

 私達が笑顔を見せると本当に喜んでくれる。

 その態度は嘘じゃないと思う。

 笑顔なんかにそんなに価値はないのに。

 いえ、笑顔が消えた孤児院を思い描いてみた。

 そんな事になったら、きっと悲しい。

 価値はないようで、実際に笑顔って価値があるのかも。

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