第47話 夏の風物詩と誕生日①

「実はさ俺…すげえ発見したんやけどさ…。」


一同ごくり。


「伊織の誕生日に伊織の地元のデカい祭りがありまーーーーーーーーーす。」


『ウォッシャァァァァァァァ!!!』



「そう、その名も"大舞泉夜祭"。」


通年、8月30〜31日に開催される地元で1番デカい祭り…なんやけど、今年主催者の体調不良で延期になったんやとか。

やから今年は9月10日の1日一発開催。


デカいだけあって、遠くからもたくさん集まってきて人で賑わう、夏に外せねぇ行事なんやぜ。


「その祭り…みんなでいこや。」


『行くぜぇぇぇぇ!!!!!!!』



_________当日、学校にて


『伊織、誕生日おめでとう〜!!!』


「みんな…ありがとう!すごい嬉しいよ…!」


「めでたいな!!!まぁでも、今日はこれだけじゃないからな!!!」


「そうだね。今日は一日楽しむぞー!」


『おーーー!!!!!!』


「今日はー、学校も祭りがあること知ってるからー4時間授業らしいよー!」


「ほんと…?」


「鍵塚くんよ、わたしの瞳を見て!この瞳は真実しか映らないのだよ…!」


「それは…ふふ、最高ね。」


「んじゃ各々まぁやることあるやろうし、5時半俺んち、こと松崎家に集合な!」


『賛成!!!!!!』



_________昼解散後


「ということでこのメンツで何がしたいかわかるやんな?」


「あぁ!もちろんだ!」


「もちろん…あれよね。」


「わかってるよー!」


『誕プレ買いに行くぞぉぉぉぉ!!!!』


伊織にプレゼントを買うために、景一、釘本、鍵塚、麦野の4人でイオンにやってきた。


実を言うと、俺はあんまり人に物をあげたことがない。つまり何買っていいかわからんのや。


「伊織が喜びそうなんってなんやろか…。」


「わたしお菓子買っていくかなー!」


「麦野がそうなら、私は…んー…。靴下…とか?かな。伊織結構運動するし。」


「せやなぁーそんなんもええなぁ…。」


「俺は…!そうだな…無難に携帯カバーとか!!」


「あぁええなぁそれ!ほんなら俺…なにしよ…。」


みんなポンポン決まっていく中で俺だけなんも思いつかへん…。非常にまずい。


よし、こういうときは、伊織との記憶を遡って……




………




「あ、あれええかもせーへんな。」




_______各々買い終わって、解散、そして


「よし、みんな集まったな。ほんな」


「絵実もいくー!」


「僕もいくー!」


「お前ら…マジかよ。」


「まぁいいんじゃないかな。たくさんのほうが楽しいし。」


「はーっはっは!そうだな!そっちのほうがたのし」


「うっさい声デカい近所迷惑黙って。」


「すんません。」


「今日も安定だねー!いやーほんとちょーたのしみぃ!」


「まぁお前らきてええらしいから、あんま騒ぐなよ。」


『おっけー!』


「はぁ…こんな怖い返事ないぞ…。」


ここで俺視点でのみんなの服装。


俺は黒色の袴を、パパからもらったのを着ている。ちょいとデカめ。


釘本は紺色の袴で、堂々かつ威厳のある着こなし方を、なにもせず振る舞えてるのがすごい。

銭湯の風呂上がりのイカツイ袴の親父、的な。


鍵塚は赤色の浴衣、まるで美しく咲いた薔薇のような、鮮やかな彩りのものである。

いつも艶めくロングの黒髪を、今日は一つ結んでいる。


「あ、鍵塚いつものメガネどうしたん?」


「祭りだし、邪魔かなって。」


「んじゃコンタクト?」


「そう。最近練習してるのよ。」


麦野はオレンジの少し深めの色をした浴衣を着ている。夏休みでまぁまぁ伸びたであろう金髪をポニーテールで結んでいる。

浴衣を自分の掌の上にあるのが如く、着こなしている。


ここで…なんだか少し疑問が。


伊織…お前なんで浴衣なんや。

紺と青の間くらいの色をした浴衣を着ており、見慣れた髪型で、少し…化粧してるのか…?

わかんねえけど。


「あれ…?伊織なんで浴衣なん…?」


「あぁー…それはですね…、家にこれしかなかったのですよ。」



_____そう遡ること1時間前、佐々野家


「ねぇ!袴とかもってない!?」


「俺はそもそもあんまり祭り行かねぇから。父さんに聞いたらどうだ?」


「兄ちゃん…これで袴なかったらバレちゃう…!」


「いやー…、俺はそうとも思わんがな。」


「なんでよ…。」


「お前の顔、両性的だし、正味どっち着ても違和感ねぇよ。大丈夫。」


「そう…かな。」


「自信持てって。俺がいうのもアレやけど、お前顔はすげぇいいんだぞ。」


「やめてよ…そんな…。」


「いやいや…、まぁ、"がんばれ"。父さんに聞いてこい。」


「うん…!いってくる!」


ボクは急いでパパに聞きにいった


が、


「もう捨てちまったよ。この家にはないな。」


「そんなぁ…。」


パパの前で崩れていると、


「私の若い頃の、浴衣あるわよ?」


助け舟…これに乗らないと…でも!

くっ…最終手段…だが、もう時間もない。


「じゃあ…それ…着てく。」



そう、一応"家にこれしかなかった"は事実なのである!


__________


「ほえぇ〜、でもなんか伊織って、浴衣でも全然違和感ないな。」


「え…そっ…そう…?」


「だってかわいいとカッコいいが入れ混じったような顔してるから、全然どっちでもいける。そして高めの身長を生かして綺麗に着こなしている。」


「や…やめてよお世辞なんて。」


「いやほんまほんま。な、みんなもそう思」


えっ…。



皆…仏の顔で天を仰いでるんだが、なにやってんねん。


「なにやってんのお前ら…。」


『なんか…素晴らしいなって…。』


「いやどういうことやねん、って伊織さ」


いや…茹で上がってんやん。


「なんでお前もタコってるんや…。」


「いや…そっ、それはなにも…気にしないで!」


「あぁ、うんわかりました。」


_______そして


結局5人プラス俺の妹弟の7人で祭りに行くことになった。


そして、俺、釘本、麦野、鍵塚の4人は、少し大きめの紙袋を片手に。


「さぁ、準備整ったんやったら…!」




『行くぞぉぉぉぉ!!!!!!!』




皆叫んでから気づいた。

これこそ近所迷惑なのだと。



そして俺たちは、薄暗くなってきている空を背に、微かに黄金色に照らされた道を踏みしめ行く。

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