07.リベンジマッチ

07.リベンジマッチ

 俺は最近、(350m/秒=マッハ1=音速)でランニングすることを日課としている。このランニング(?)はスキル『駆け足』と『神速移動』の中間の速さで走ってみようと調整した結果、この速度(350m/秒=マッハ1=音速)になったのだ。

 元いた地球では味わえない速度が俺は楽しくて毎日続けている。しかし、このランニングには致命的な欠点がある。それはちょっとした木の枝でも当たれば致命傷になってしまうところだ。

 そこで、俺は全身に常に風魔法を纏わせ、自分の直径5メートルくらいの障害物を自動で切断するような仕組み、まぁ簡単に言えば風魔法で作ったエアカッターの結界を作ってランニングしている。

 そして昨日、ついに俺は森の中をランニングしている時に偶然あの『ゴブリン』の居場所を見つけた。だいたい俺の拠点から、東に体感50Kmくらい行った先の竹林だ。

 奴のLvは250―――そう、今の俺と同じなのだ!すなわち、今の俺ならヤツを倒せるかもしれないということだ。

 というわけで俺はあの日の雪辱を果たすべく、奴の住処に向かった。(実質、2分半くらいで着いてしまうのだが………)しかし、奴はまだ昼寝をしていた。


 俺は地球にいた頃、よく通ってた武道の道場の師範に不意打ちは良くない、武道の精神に反する。やるなら、真正面からやれ!と怒鳴られていたので、しっかりとゴブリンを棒でつついて起こす。

「もしもーし、ご快眠のところ申し訳ないんですけど、貴方にリベンジしにやってきました!」

 よしっ、これで正々堂々勝負ができる!

『俺の心地いい、眠りを良くも邪魔してくれたなぁ!』

とゴブリンが怒って襲いかかってきた。まぁ当然だけど、お昼寝を邪魔されたときのテンプレだな、と思いながら俺は後ろに下がる。

 鋭い爪が空を切って、俺の脇腹の横を通りすぎた。しかし、これは余裕でかわせる。次は咆哮だ。口を思いっきり開けてから、火、水、風、雷、土、闇の聖魔法以外の全ての属性の咆哮だ。まぁ、これも全部避けられる。

「ハハッ、こんなの余裕だぜ!」

『ご主人様、調子こいてると当たりますよ?』

「当てられるもんなら当ててみろってんだ!」

 実はこれだけ俺が調子こいて避けられるのにはワケがある。俺が昨日ランニング(自分に回復魔法かけつつ、風魔法を体に纏わせて障害物を木っ端微塵にしつつ、全属性の魔法を体の周りに出現させながらマッハ1で三時間走るやつ)をやっている時に、このゴブリンを見かけたので追いかけてみたところ、羽の生えたトカゲと戦っているのを見つけたのだ。そして、気になって遠目に見ているとこの技を使ってトカゲを撃退したのだ。縄張り争いかなんかだったのかな?でもその戦いをじっくり観察できたおかげで、こっちはヤツの手の内ほぼ知ってる状態ってわけだ!

「それじゃあ、反撃と行きますかっ!」

 俺は未だあの最大級の魔法は使ったことが一度もないので、このゴブリンに対して試しに使ってみたいと思った。

「あぁ、俺の初めてがこんな相手だとはなっ…………」

『なーにを変な言い方してるんですかご主人様!』

「遊びだよ遊び!」

『あの日こいつに追いかけ回された恐怖はもう忘れたんですか?あの時のご主人様はまだなーんにもできなくて大変可愛らしかったのに…………』

「なーにが可愛らしいだ!ナビさん、お前は俺の母親かよ!それはさて置きちょっと試してみるか!」


地獄の業火じごくのごうかッ!」


 ドガァァァン!と鼓膜が破れるような音がして、あたりが土煙で一瞬真っ白になった。煙が晴れると、そこには変わり果てた森の姿があった。ゴブリンがいたはずの竹林はもう跡形もなく、俺の前方3kmくらいはただ無機質に焼かれた地面が露出しているだけだった。

 俺は最初、何が起こったのか理解できなかった。30秒くらい経ってようやくこれは自分の「地獄の業火」でやってしまったことなんだと脳が理解した。うーん、これはなんというか………超大型核弾頭がマッハ10くらいのスピードで突っ込んできたような威力だな。(まぁ見たことないし、体験したこともないけど………)正確にはよくわからないから誇張しすぎたかもしれないが、とにかく半端じゃない威力なので、この技はむやみに使わないほうがいいと思った。


「ん?アレはなんだ?」

 大きくえぐれた地面をよく見ると、大きな宝石のようなものが落ちていた。

『それはあのゴブリンの『魔石』ですね。武器とか色々なものに応用できると思いますよ!』

「魔石ってアレか?なんかよくある魔物の体内にあって魔法杖まほうじょうの先端とかに付いてるやつか?」

『そうです!それです!』

「なるほどな………便利そうだし、とりあえず持ち帰るか……」


《称号『鬼殺し』を獲得しました》

《レベルがLv250からLv450に上昇しました》


 例の創造神様の声が聞こえて、俺のリベンジマッチは幕を下ろした。

 あとからナビさんが教えてくれたのだが、称号は強いモンスターを倒したり、何かすごく特別なことをやったりするともらえるものらしい。(じゃあ、俺が前にもらった『ドMを極めし者』ってなんだよぉぉぉっ!)





リュートのステータス

Lv:450

HP:25000000(二千五百万)

MP:50000000(五千万)

獲得スキル一覧:(剣術系)縮地、絶対切断、次元切り、持久力、駆け足、神速移動

(魔法系)苦痛耐性、錬金術、生活魔法、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、雷魔法、聖魔法、闇魔法、

ユニークスキル一覧:ナビゲート

称号:異世界人、苦痛に耐えし者、不運の象徴、修行バカ、ドM気質、ドMを極めしもの、剣神、魔帝、鬼殺し

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る