転生した暗殺者は自キャラの幼い頃でした◇◇◇ゲーム知識を元に生き延びる◇◇◇

メイデン

なんか転生してました

第1話


「あー……これが巷で有名な異世界転生か。てか私死んだの?」


 ボロボロの荒屋の床に座りながら私は呆然と呟いた。上半分が割れた水瓶の水を除くと白髪で赤紫の目の小学校高学年ぐらいの身長の女の子が映った。


(この容姿……【バックストーリー・オンライン】のアンだね)


 私が10年近くもやってたゲームの自キャラ。アンノウンから取ってつけた名前でキャラメイクで自分で作った容姿そのままだけど……なんか幼くない?


「これバックストーリー中に転生したのか。面倒だなぁ……」


 【バックストーリー・オンライン】はファンタジーVRMMOゲームで、最初に決めたキャラの種族、容姿、職業からプレイヤー1人1人に過去の経歴が作られるシステムがある。アンの経歴は……


ーーーーーー

その忌子は異端として村から追い出された。

忌子は山の廃墟に暮らし敵を影から殺す技術を独学で磨いた。

その目は敵の命を見定め、その手は敵の命を止める。


哀れに思うな。その忌子は冷血な暗殺者である


出身国:アルカンシェル王国

ーーーーーー


 確かこんな感じ。つまり今は『山の廃墟に暮らし』って部分なんだろうね。村での様子も思い出そうとすれば思い出せるし……というか前世の方の記憶があやふやだね。自分の名前や顔、家族知人のことが思い出せない。それ以外のことはバッチリ思い出せるのに……


「というかこの体の記憶……あんまり良いことないな」


 山に囲まれた閉鎖的な村特有の頭の硬い馬鹿どもに差別されて、両親が病気で死んで、事無かれ主義の村長から排他的な村長に変わったことで村から追い出される。そりゃあんな文章になるわ……国自体は普通なんだけどさ。よくあるファンタジーな王国。


「とりあえずステータス見れるか確認しよう。ステータスオープン」


 私はゲームの時の方法でステータスが開けるか確認してみた。使えないと困ったけど無事に開いたから今の私はどんな感じか確認してみる。


ーーーーーー

アンlv1

魔人

暗殺者

HP:30

MP:60

スキル

《病気耐性・Ⅱ》

病気に少しなりにくくなる

《苦痛耐性・Ⅱ》

痛みやストレスに少し耐えやすくなる

ーーーーーー


 oh、思ってたよりもHPが低い。あとスキルが……まぁ、中々に酷い生活してきたからね。ちょっと虐めにもあってたし……まぁ、ゲームじゃなくて現実になってからは良いスキルだね。IじゃなくてIIだし。

 ついでに種族に関してはこれもバックストーリーに関連してるんだよね。というのも私キャラメイクした時に種族の部分をランダムで進めていて、それでレアな先祖返りの魔人っていうのを引いた。別に強い種族になる訳じゃないし結果今の状況になってるからバッドストーリーだね。魔人だって見た目は人でMPがちょっと多く後はテキストデータで寿命が長いくらい……リアルだと寿命は割とありか?


「というか……ゲームの時は今から成長した姿でノースキルだったのに。その時より幼いのにスキルあるね」


 そこはゲームとは違うってことかな……まぁ、ノースキルで山暮らしはハードを超えて難易度がルナティックだしね。片手武器しか使えず覚えやすいスキルは正面戦闘に不向きなものが多い暗殺者だと特にね。


「ゲームの世界とはいえ子どもの頃からでもスキルを取得可能かぁ……ならなんとかなるかな?」


 長いことやってたゲーム。知識もかなりある……効率よく進めれば生きていけるかも。ゲームの私だって成長できてたんだし。


ぐぅぅぅ……


 私が色々考えているとお腹が鳴ってしまった。自覚してなかったけど空腹がヤバい……


「お腹空いた……何か食べないと」


 とはいえ今の私は7歳程。この山にはモンスターが生息しているから狩りは危なくてできない。この荒屋は薬師が住んでいたのか薬草の臭いが強くてモンスターが寄ってこないけど……


「このスースーする臭いが苦手なのかなぁ……私はそうでもないけど」


 私は立ち上がると壊れた棚に置いてあった錆の浮いた短剣とツギハギの袋を手に取った。そして半分崩壊している入り口を這いずって出た。


(さてと……木の実探そう)


 狩りは最低限のスキルを得てから。いきなり狩りをするなんて馬鹿か自殺志願者がすることだからね。ゲームの時ですら最初はノースキルで調子に乗ったプレイヤーがスライムにフルボッコにされてたし。ゲーム内最弱のね。

 戦闘するには少なくとも動きを良くするスキルは必要になる。ゲームの時と同じなら反復練習……取りたいスキルに応じた行動をしていけば良いはずだから今日と明日で揃えて1週間後までには狩りをしよう。肉は成長に大事だし。


「コソコソ……コソコソ……」


 私は茂みや木の間を静かに隠れながら進んだ。これは暗殺者御用達の《隠密》と《忍び足》を習得するための動き。この2つを習得できればとりあえず生存率は高くなる。


(んーと、確かこれは食べれるやつ。あっ、こっちは薬になるやつだね)


 私はゲームの時の知識で食べれる木の実や薬草類を採取。ボロ切れの袋へと詰め込んでいった。


「もぐもぐ……うん。不味い」


 偶につまみ食いしているけれど渋かったり物凄く酸っぱかったりしてあんまり美味しくなかった。まぁ、仕方ないか……だってこれ毒だし。渋いのは毒で酸っぱいのは麻痺の効果があるんだよね……


「まぁ、大量に食べなければ問題無いんだけど……」


 そして食べてる理由は耐性スキルを習得するため。毒と麻痺は絶対に取っておきたい耐性スキルなんだよね……1番受けやすい状態異常だから。


(どんどん強いやつにしないとスキルが強くならないけど……1番最初はこの木の実で充分)


 だけど舌が死ぬ……流石に不味いもの食べ続けるのは辛い。とはいえ美味しい奴は……


「キキキ!」


(モンスターが寄るんだよね……)


 茂みからヒョコっと顔を出した私は黄色のリンゴのような木の実を齧っている緑色のネズミを見た。ネズミといってもサイズは中型犬サイズで長い歯でバリバリと木の実を食べている。


「シンリンラット……この山に居たんだね」


 この山の生息分布は知らなかったから情報更新だね……ゲーム開始した時はこの荒屋から出て町に居たからはっきりいうとこの山は素人です。採取した奴は森なら生えてる奴だからなんとかなるんだけどさ……


(あいつが食べてるのはキリンゴの実か……食べたいけど今は無理そうだね)


 シンリンラットはかなり弱い方のモンスターだけど真っ向からやるにはまだ怖い。薬無いから怪我したくないしね。


(とりあえず木の実とかある程度集まったし帰ろう。あの木の実は近いうちに手に入れる……)


 私はキリンゴの場所を覚えてコソコソと荒屋へと帰った。帰り途中もモンスターの気配を感じたがバレないように息を殺し迂回したり隠れたりしてやり過ごした。


「さてと薬草で薬作りたいけど……道具足りないな」


 薬を作るためのすり鉢とかはあるにはあるけど。壊れてるのが多くてね……使えそうなのは石の擦り鉢くらい?木製の奴はダメそう。


「仕方ない……あそこに行ってみるか」


 私は溜め息を吐くと再び家を出た。そして今度は追い出された村の方へ向かった。この荒屋山の奥の方にあるから村まで行くの面倒なんだよね……おかげで村人と会うことはないだろうからそこは安心だけど。あと村に向かったからって買い物したり盗んだりするわけじゃない。


(あそこなら何かしら使えるものがあるでしょ……あのゴミ捨て場なら)


 私が向かったのは村の外れにあるゴミ捨て場。ゴミ捨て場って言うけど実際はゴミを不法投棄する場所なんだよね……記憶を辿ると今までも何回か漁ってるんだけど割と色々とある。ゴミだから大してまともなものないけどね。


(通り道に畑があるんで面倒なんだよなぁ……)


 今の時間帯……夕方になる前くらいは人がいることがあるからね。私は気づかれないように茂みを再びコソコソと移動していった。そして無事に森の中にあるゴミ捨て場へと到着した。


「相変わらずゴチャゴチャしてる……」


 折れた包丁とか割れた瓶の破片があるから怪我しないように注意しつつ使えそうなものがないか探していった。


「あっ、この木の皿はまだ使えそうだね。あとこの砥石も小さいけど……他にもいくつかあるし持って帰ろう」


 それとこのマントも大人用でボロボロだけど少し弄れば合うように直せそう。私はゴミ捨て場から使えそうなものを回収して荒屋へと帰った。


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