雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜

霞杏檎

第1章 ギルド追放編

第1話 ヒーラー、専属ギルドを追放される

「おいフール!! さっさとフロアの掃除せんかぁ!!」


「す、すいません!!」


 椅子にふんぞり返り、俺に怒鳴る戦士ファイターのガイに腰を低くしながら掃除を始める俺はフール。このギルドで回復術士ヒーラーとして働いているのだが今ではこのように掃除からお茶出しまでこなす雑用係へと成れ果ててしまっている。俺はペコペコと腰を低くして杖ではなくモップを持って泥で汚れたギルド内の掃除をしていた。


「お~~い、フールく~~んこっちも汚れてるんだよなぁ~~掃除してくれよぉ~~」


 そう言って近くに居た”盗賊シーフ”のギルドメンバーがわざと木のジョッキに入っていたエールを床にぶちまける。


「はぁ……今やりますから……」


 俺に対してのこういう仕打ちはいつものことだ。本当なら、俺もクエストに出てモンスターの討伐とかしてるはずなんだけどな……何度か、ギルドのみんなに俺の能力のことなど話したが誰も信用することがない。もうやめてしまいたいと思ったが憧れのギルドに入った以上、この苦痛に耐えることしか考えていなかった。


 するとギルドの玄関ドアが開き、数人の冒険者が入ってくる。入ってきたのはこのギルド屈指の実力者が集まったS級パーティ達だった。メンバーはまずパーティのリーダーで”重戦士ファランクス”であるダレン。体格も良く、金髪でイケメンでギルドの看板として有名人だ。そして、”魔導師ウィザード”のシュリン。ギルド1番の美女で長い黒髪とその豊満な胸が特徴的であり、男達を釘付けにしてしまう魅力がある。ダレンとデキてるとか……

 そして、”回復術士”のアインと”狙撃手アーチャー”のロウ含めた4人パーティで構成されている。


「よう、フール! 相変わらずモップが似合うなお前は。杖じゃなくてモップ持ってたらどうだ?」


 ダレンの言葉でギルド内の者達が一斉に笑い出す。俺はぶん殴りたい気持ちを強く抑えつつ笑顔で対応した。


「ところでダレンさん、今日はどんなクエストを受けてきたんですか?」


「ああ、最近この”バールの国”付近でまた新しいダンジョンが見つかったんだ。それを俺たちがギルドを代表して先行調査をしてきたって訳だ。だが、収穫はイマイチだったな……魔物も全く見かけなかったし、もしかしたら低級モンスターの住むFランクのダンジョンなのかもしれんな。お前にちょうど良いかもな? なんせ、『単体回復魔法しか』使えないんだからなぁ? はっはっはぁーー!!」


 またしてもこいつの言動にイライラさせられるが深呼吸をして怒りを静める。


「あ、そう言えばフール。ギルドマスターがお前に話があるって言ってたぞ。まっ……頑張れ~~」


 そう言ってダレンは俺の肩を叩くと二階へと上がって行く。後ろに居たシュリンも口に手を当てて微笑みながら俺の前を通っていった。


 一体俺に何の用があるのだろうか。ここのギルドマスターであるアーカムと言う男は酷くギルドメンバーから恐れられている。何でも、その厳しさから何百人のギルドメンバーが逃げ出したと言われている程の男だ。俺も数回しか顔を見たことはなかったが俺だけ呼ばれているのを耳にすると不安になってくる。


 俺は掃除を終わらせて、掃除用具を倉庫へ置いてからギルド内にあるギルドマスターの部屋を訪れた。

 部屋の前に立ち、2,3回ノックをする。


「失礼します。回復術士のフールです! アーカム様はいらっしゃいますか?」


「……入れ」


 扉の奥から男性の声が聞こえたので俺はゆっくりと扉を開けた。


「失礼します……」


 そこにはデスクで腕を組み、深刻な顔をして座っている初老の男がいた。この人こそが正しくギルドマスターのアーカムだ。その顔の厳つさから少しおびえてしまいそうになるがゆっくりと歩みを進めてアーカムのデスクの前に立つ。


「あの、ダレンさんから聞いたんですけど……俺に何か用ですか?」


 そう訪ねるとアーカムは少し間を置いてから口を開いた。


「お前は……最近ギルドの一員として活躍はできているか?」


「……」


 その質問に俺は答えることはできなかった。なぜなら、ここ数ヶ月はパーティに入ることができず、クエストをこなすことができなかったからである。基本回復術士はパーティには欠かせない存在なのだが俺はこの性格のため、周りに舐められている。その結果俺を馬鹿にしてパーティに入れてくれないのだ。


「どうだね?」


「ええっと……」


「……最近の事はダレンから聞いている。何でも、杖の代わりにモップを持っているようだが?」


 その言葉を言われて、俺は体中から汗が湧き上がって来る。この流れは非常に不味いのだが返す言葉もない。


「……俺は君のような使えない人間をギルドの一員に任命した覚えはないんだがな」


 アーカムのその言葉に俺は怒りがこみ上げてくる。それでも俺は返す言葉が見つからずその怒りは悲しみへと変わって言った。俺は口を噤み、俯く。


 そして……言われたくない言葉を掛けられることとなる。


「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 以上だ、そのまま下がるが良い」


「……はい」


 俺はふらふらと歩きながらギルドマスターの部屋を後にする。

 こうして俺はこの専属ギルドから戦力外通告を受け、追放されてしまった。


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