コンビニ帰りの天使に殺されたら、賢者の石を宿す者に転生!願えば魔法も擬人化、獣人化!けど俺は変態だったらしく、力が暴走し、気付けば英雄になっていた

アイ カワウソ

第1章 運命の日

第1話 コンビニ帰りの天使に殺され転生した日

(ロリメイド特集? いらないなぁ。次は)


 勇利ゆうりは、バス停でスマフォを持ち。ネットサーフィンをしながら、バスが来るのを待っていた。


「ん? 何だ」


 勇利は頭上から聞こえる異様な風切り音に、気が付いたが。

 風切り音の正体も分からぬまま、脳天に強い衝撃を受けた。


 ズゴォォン


「ガァァ……」

「おい! 大丈夫かキミ! オイ!」

「早く救急車を!」


 俺は何があったかも分からぬ中、意識が暗黒に覆われていく。


 そんな時、可愛らしい少女のささやき声で、暗黒の世界に一筋の光が差し込んだ。


「もしもーし聞こえてますかぁ? 聞こえませんよねぇ? なら、私は帰っても」


「――ぐぅ。いてぇな……あれ? 痛くないぞ」


 俺は脳天に受けた痛みが全くない事に、違和感を覚えたが。

 理由を考える暇もなく、少女のダミ声が聞こえた。


「げげぇ」


 俺は、なぜ目をつむったかも思い出せないが、重いまぶたを開けた。


 暗い世界に微かに光を放つ少女が、俺の顔を心配そうに覗き込んでいた。


 俺は彼女に見覚えがなかった。髪、服、スカート、肌、全て真っ白。


 そしてかなりの美少女だ! ただ見た目は10歳くらいの子供に見えた。


 それより気になるのは、彼女の後ろで光ってる翼だ!

 辺りは真っ暗だしLEDライト付きの翼だろうか?


「……えと、ですねぇ」


「ん?」


 何だろうか? 話しにくそうにしてるが。

 初対面だし、緊張でもしてるんだろうか。


「貴方は、死んだんですよぉ!」


「は?(死んだねぇ)」


 どうやって俺を、この部屋に運んだかは知らないが。

 天使のコスプレしてるし、天使ごっこの悪戯いたずらだろうな。

 手が混んでるけど、俺はそんな暇じゃないから、早く悪戯やめさせるか。


「で。俺の死因は」


「え! 死因!」


「そう。死因」


「えぇと、ですねぇ。死因は……そう! そうですよ! 貴方の死因は、車に跳ねられて死んだんですよ! そうなんですよ! そうなんですともぉ!」


 あからさまに嘘だが、満足そうに目を閉じてうなずいてるな。

 出口探すにも部屋が暗いから、明かりがいるし光ってる羽1枚貰うか。

 悪戯に付き合ったんだし、1枚だけだしいいよな。


 ぶち!!!


「ギャァァァァ! 痛いじゃないですかぁ! 何するんですかぁ! フゥフゥ、ハゥゥゥ。私の大事な羽がぁ」


「へぇ、よく出来てるじゃないか」


「返してくださいよぉ! 私のはねぇ」


「返すのはいいけど、悪戯ならな! 翼……光らせてなに……」


 ありえない……女の子の翼が光ったと思ったら、持ってた羽が翼に吸い込まれて消えた。


「何したんだ!」


「はぁ。これで、わかったでしょう。貴方は死んだんですよ」


 確かに不思議な光景だったが。


「そう言われてもなぁ。死んだ実感ないし」


「そ……そうでしたぁ! まだ自己紹介をしてませんでしたよぉ。私は、天使のエクリアですよ」


 なんだ? 急に慌て始めたが何かあるのか?


「天使のエクリアちゃんね。俺は勇利」


「それで、勇利さん!」


「ん?」


「勇利さんは、ラッキーなんですよ」


「何が?」


「勇利さんは、死んでしまいましたが!!! 死んだ時に、天使に会えた貴方には! ななななんとぉ!!! 転生と言う名のスペシャルな特典があります!」


「転生?」


「そうなん! くげげ!!!! はわはわ逃げなくてわぁ」


 何だ! 自慢げに話してたのに、走り出したぞ?


「おい! どうした。ん? 白い扉? こんなの無かったよな?」


 白い扉が開かれ。1人の人影が部屋に足を踏み入れると。


 白い扉は消滅し、まるで時間が止まったかと錯覚するほどの早さで、まばゆい光が部屋全体を明るく照らした。


 一瞬、まぶしさに目がくらんだが。目が慣れて、周りが見えるようになった。


 明るくなった部屋を見回したが。壁も何もない白い空間が広がっているだけだった。


「何だこれ。出口ないじゃねぇか?」


「エェクゥリィアァ! ちゃぁぁぁぁぁん! 何を! してくれちゃったのかしらぁぁぁ!!!」


「ひゃいぃぃ」


 白い扉から現れた人影は、部屋全体が揺れる程の声でエクリアを怒鳴り散らしていた。


「ほんとぉぉぉぉに! すまない。勇利殿!」


 俺の前には、ダンディな喪服姿のおじさんが。土下座をし声を震わせていた。


「え? 何がですか? てか誰ですか?」


「おっと、これはすまない。私としたことが、謝る事ばかりを考えていて、自己紹介をしていなかったな。私はこの世界の神だ」


「いや、神とか言われても(天使の次は神か。はぁ)」


「今は信じずともよい。時期にわかるでな」


「そうですか……」


「自己紹介も終わったので、本題に入るとしよう。勇利殿が死んでしまった、本当の理由を話そう」


「俺が死んだ理由?(確かエクリアは、車に跳ねられて、とか言ってたが)」


「うちの天使エクリアが! 勇利殿を殺してしまったのです!」


「な! おい! 何がスペシャルな特典で転生できますだ!」


「ピューピュー」


「なに口笛吹いて誤魔化ごまかしてやがる」


 先程まで大事な部下のために謝りに来た、上司のように優しく見えていた。

 神の表情が、般若の面でも被ったかのように変わっていた。


「何をのんきに口笛を吹いとるかぁ!!! 上司である、わしが土下座をし頭を地面に擦り付けとるというのに! 貴様も! こっちに来て謝らんか! この戯けが!」


 エクリアは神に頭を鷲掴わしずかみにされ、地面に叩きつけられた。


「プギャ」


 ドゴォォォォ……


「勇利様を殺してしまい、どうもじゅびまじぇんでじだ。うぅ鼻血がぁ。キ!」


「何をにらんどるかぁ!」


 ズガッ!


 痛そうだな、頭半分は地面にめり込んだぞ。


「ぎゃん! じゅびまじぇん」


「まったく貴様ときたら。本当にすまないな。勇利殿」



 俺は……ずっと死んでいないと信じていた。いや信じたかった。

 だが、神と名乗る方の真剣に振る舞う姿を見て、自信がなくなっていた。


 いや、心の何処かでは、分かっていたのかもしれない。

 本当は、自分が、既に死んでいるという事が。


 俺は気持ちを落ち着かせて話した。


「自分が死んだのは、何となくですけど、分かっていたので謝るのは、もういいですよ」


 勇利の言葉でエクリアは、天にも昇る心地で満面の笑みで。


「おほぉ!」


 エクリアの喜びの声を、き消すように。


「ならん!」


「え?」


「このバカがしでかしたおこないは、勇利殿にも見てもらい。我が下す罰を見届けてもらわねば! ならんのだ!」


 天使は土下座したまま。


「バツ!!!」


「見ると言っても、どうやって?」


 神は指を鳴らした。


 パッチン! ブゥン


 俺の前に映像が浮かび上がった。


「おぉ、映画とかで見たことあるぞ、こんなの。お! これはエクリアか」


「ふんふん、ふふーん。今日の夜更かしセットはぁ、お菓子にぃ、缶コーヒー完璧ですねぇ。でゅふふ」


 エクリアはコンビニで買い物をし、空を飛び天界に向かっていた。


「な……なにしてんだ、この天使。人間の街で買い物していいのか」


「むろん、いかんのだが。このバカはあろうことか、無許可で下界へ行き、買い物をしているのだ」


「しかたないじゃないですかぁ。天界には、娯楽もジャンクフードもないんですからぁ」


 のんきな天使だな。


「はぁん!」


「あ! いやなんでもないです」


「はぁ。このバカは毎度毎度、何度も何度も! 無許可で下界に行ってるのだが。まぁあ今までは問題はなかったのでな、注意程度にしていたのだが、まさか人を殺してしまうとわ」


 明るい表情で、手で頭を掻きながら。


「いやいや、殺したくて殺したんじゃないですよぉ~」


「はぁ! 死んだら同じだろうがぁ」


「そ……そうですね、すみません。はぁ」


「ここからが、勇利殿が死ぬ所になります」


 映像には、エクリアがお菓子を食べながら、空を飛んでいる姿が映っていた。


「ぎゃぁ! なんなんですかぁ! あなた達はぁ! やめて下さい!」


 すげぇカラスに追われてるなぁ。


「まぁ。空でお菓子食べてたら狙われるよな」


 おぉ! すげぇ勢いでお菓子食ってる。


 モグモグゴキュ!


「えとえとですねぇ、そうですよぉ! これがありました! これで手を打ちませんか!」


 買い物袋から、お釣りの1円を取り出した!


「カラスに1円見せてどうすんだ!」


 カラスは目を光らせ! エクリアの口についた、お菓子の食べカスに突進した。


「ギャァァァァ!」


 カラスの突撃に驚いて、持っていた買い物袋を落とした。


「あぁぁぁ! 私の大事な夜更かしセットがぁぁぁ!」



(ロリメイド特集? いらないなぁ)


 異様な風切り音を立て、バス停で待つ勇利の脳天に直撃した。


「なるほど、俺はエクリアが落とした、買い物袋で殺されたのか。はぁ、そりゃあ死んだのに気が付かねぇよな」


 映像には、地面に無残な姿で散乱した。夜ふかしセットを見たエクリアの姿が映し出されていた。


「がぁぁぁ! 私の夜更かしセットがぁ、ぐちゃぐちゃですよぉ! あの腐れカラスども! 許せません! 焼き鳥にして成敗してやりますよぉ!」


「おい、キミ大丈夫か!」


「ん? 何ですか? 後ろが騒がしいですねぇ? げげ!! これ、私のせいですかねぇ?」


 神は腕を組み、深いため息をし。


「はぁぁ。まぁ、このバカが勇利殿を殺した流れは、こんな感じだ」


「殺してしまい、すみませんでした」


「はぁ」


「勇利殿は、本来死んではならぬ存在だ。だが、神の私であってしても、死んだ者を、同じ世界に生き返らせる事は許されん」


「ですよね。ん? 同じ世界に?」


「あぁ、違う世界なら、生き返らせる事ができる」


「違う世界があるんですか?」


「あぁ、あるのだ。それで提案なのだが。天使エクリアが殺してしまったお詫びに。勇利殿が良ければ、違う世界で転生するつもりはないかね?」


 俺は考える間も無く、決断した。


「是非お願いします! このまま死ぬ何て。俺はごめんだ!」


「そうか。それはよかった」


 神の表現が笑顔から鬼の面を被ったかのように、豹変ひょうへんした。


「では。次に無許可での転生および殺人者エクリアについてだが」


「殺人者! てか! 転生って! 何ですかぁ! 転生、何てさせてないですよ!」


 ダァン! ダァン!


 この天使は、子供なんだろうか。子供みたいに地面を踏んで抗議してるが。


 神様凄い睨んでるんだが。


「あぁぁん!!! 未遂だろうが! 転生させようとしたであろうが!」


「は……はい。そうです。すみません」


「では。天使エクリアは罰とし、殺した勇利殿のと一緒に転生し、勇利殿のお世話をし罪を償いなさい」


 エクリアは前のめりに倒れ、世界の終わりかのように、地面を叩いた。


 ドォン! ドォン!


「ぞんなぁ! やっと天使になれたのにぃ! 夜更かしセットもない世界なんてぇ!」


「だまらっしゃい!」


「はうぅ」


「罪を償えば、天使に戻してやる」


「それ何年かかるんですかぁぁぁ」


「貴様の努力次第だ! あぁ、それと勇利殿が、1人で転生したいと言ったら、この罰は無しで」


 エクリアは、俺が断れば天使のままで、違う罰と思ったらしく。

「夜更かしセットォ」天使の微笑みで祈りながら喜んで空を飛んだ。


 普通に考えて、自分を殺した奴と、一緒に暮らしたい奴なんていないからな。


 神はエクリアを無表情で見て。


「1000年、地獄で雑用をしてもらう」


「1000年、地獄。ははははは」


 先程までの天使の微笑みは消え。高熱を出したかのように、全身を小刻みに震わせ、汗を滝のように流していた。


「大丈夫か? エクリア。うわ! 何だ! 近い」


 エクリアは、勇利にり寄り、猫がじゃれるように、全身をなすり付けながら話した。


「わたしぃ、勇利様とぉ、一緒にぃ転生の旅したいなぁ。私もぉ、連れてってぇ、くれますよねぇ! ねぇ!」


「わかった、わかったから、連れてくから離れてくれ」


「よし! やりましたよぉ、地獄回避ですよぉ~」


 ガッツポーズをし喜んだ。


 俺は、知らない世界で1人は怖いし、エクリアも連れて行くつもりだったが。


 少し後悔していた(性格はクズだが。やっぱり可愛いんだよなぁ。何ですぐ返事したんだよ俺! せっかくの美少女吐息に柔肌ガァァァ!)


 神がエクリアの頭に触れると、怪我が一瞬にして治ってしまった。


「おぉ。神秘的だ」


「怪我は治しておこう」


 エクリアの奴、神様をめちゃ睨んでるなぁ。

 まぁ怪我させた神様が治してるから気持ちはわかるが。


「ありがとうございます。神様」


 神が俺の肩に手を乗せ優しく話した。


「心の準備はよいな」


「はい」


「2人を近くに転生させる事はできるが。悪いが転生の状況までは選べんのだ。すまないな」


「わかりました。神様」


「でわ、勇利殿、達者でな。エクリアも、しっかりと罪を償いなさい」


「はい」


「はぁい。はぁ」



 返事をすると全身が光に包まれた。


「はぁぁ。なんか全身の力が抜けて、まるで空を飛んでるみたいだな」


「なぁに! ひたってるんすかぁ。私の人生めちゃくちゃにしといてぇ!」


「いやいや、俺の人生めちゃくちゃにしたのがお前だろ!」


「へ! そんな昔の事は忘れちゃいましたねぇ」


「な! エクリアてめぇ。神様がいないからって」


「ふん」


「あれ? エクリア。羽1枚黒いぞ?」


 おぉ、エクリアの顔が青くなってく。

 顔が真っ青になるとか初めて見たな。


「ギャァァァァ! 私の純白の羽がぁぁ! なんでぇぇ」


「もしかして、償う俺に悪いことすると、黒くなるんじゃないか」


「何ですか! そのいらないギミックわぁ!」


「俺に言うなよ。罰を与えた、神様の仕業だろ」


「ぬわんですかそれ! あのクソ神がぁ! ムキィィィィ」


「あれ? また1枚黒く」


「やぁぁ。神の悪口だけで! なんでぇ」


「俺と神に悪い行いをすると黒くなるのかもな。試しに神様をめてみろよ」


 エクリア、すげぇ不機嫌な顔なんだが、どんだけ嫌なんだよ。


「神様は、いつもおやつを分けてくれる。素晴らしい上司です。ありがとうございます」


「お前、それ褒めてるのか」


「全力で褒めてますよ!」


 エクリアの羽が輝いた。


「お! 1枚は白くなったな」


 胸を張り!


「ふ。ちょろいですねぇ! 次は、勇利…………ないですね」


「まぁ、会ったばかりだしな」


 話しているうちに、眠るように意識は途絶えた。

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