第16話a

「ファイヤーランス!!」

「ヘルピ!!」

砂埃が宙を舞う。暴力が砂塵を、人を浮かせてしまうほどの混戦が学生達の手によって起きていた。


「『アンサズ』と。ほい、バン飛べ。」

苦悶の悲鳴が鳴り響く。手加減はしているので死んではないだろうな。


「そっちはどう?」

スコップで手首を砕いている百合根の方に声をかける。まだまだ全然余裕そうだが一応確認しとかないと。


「全然!まだまだ余裕でいけるよ!楽しいし!」

周りの敵さんらはドン引きしているがまぁこんなふうに暴れられるなんて前の世界じゃ考えられなかったもんな。


「そうか。如月…あ、いや姉、如月悠奈の方は?」

「なんでフルネームなのよ。別に下の名前で…いや、やっぱr「悠奈!よろしく!」あ!違うってだから…」

「今はそんな事よりこの状況の打開策を考えないといけないよ!!」

妹にそんな事と言われ軽く拗ねている悠奈は置いておいて確かに少しまずいかもしれない。

別に自分達が負けるなんて思ってもないがステータスという不確定要素がある以上100%負けないなんて保証は何処にもない。


「手は何かある?ちなみに俺はあるが十人くらい死ぬかもしれないから無理。」

「「使えねぇ」」

「うっせ。そっちは?」

彼女は少しだけ悪戯っ子のように頬を動かす。


「いいけど、君まで倒れるかもしれないよ?」

ほぅ?舐められてるなぁ。

「いいぜ?それで倒れたとしても面白そうだし。やっちまいな。」

あいあいさー!!という声とともに辺り一面が白い煙で見えなくなる。

それと同時に人が倒れていく音が聞こえた。


「…ッ!?」

「あら?耐えたんだ。やるじゃん無常。」

「…いや、別に、少し魔術使った…。」

…少し舐めていたようだ。体内に少しずつダメージが加わっている…。

体内時間を弄る魔術でどうにか送らせてはいるが時間の問題だろう。


「今の、攻撃は?」

「煙玉よ。でもこれは私たち二人のアレンジバージョンね。」

「火薬の中に睡眠薬を入れてやったのよ。」

なるほどなぁ。だったら解毒しなくてもいいかもしれない。この調子だと夜に解除したらうまい具合にレム睡眠に入れそうだし。それに毒を抜く魔術をしなくて済むのはありがたい。あれは体力をだいぶ使うしな。


「貴様ら…!?」

どうやらあの声のデカいやつはまだ意識があったらしい。

「なに?まだ用あんのかお前。」

顔は鬼の顔となっておりどれだけキレているのかが良くわかる。

「…田中誠。」

「!」

「高橋治、鈴木美優、坂本祐、北村朱子。お前が破滅させたやつだ。」

「そうだっけ?どういう理由で潰したのかは覚えてるけど、名前とかあんまり覚えてないよ?」

隣の二人からの視線が痛い。


「あんたやってるなぁ…。」

「なにしたの無常?そいつらに。」

「え、まぁ色々…って、あれ、寝ちゃってる?」

そんなんで寝ちゃう程度の正義心なら捨てちまえばいいのに。いや、恐らく本人も自覚していない偽善の心か。いつ気づくのか楽しみだなぁ。


「さて、行こうか。行く場所はあるか?」

「私達が暴れちゃったお陰で只今なくなったところだけど?」

それもそうだしな。

「家は?」

「残念なことに二人で暮らしてた所は寮なので行けない。」

そうか……。ん?こっちを見てるんデスケド…。

「んーじゃあー頑張って…「「あーあ!どっかの誰かさんが私達に会わなければ良かったのになぁーーー!!!」」声合わさってうるさっ!」


………。はぁ。


「うち、来る?」

「はぁ?何偉そうにいってんの?」

「」

Oh…。

「帰っても?」

「家事よろしくね?」

Oh…。まぁ綾瀬に任せればいいか!






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る