応援コメント

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  • 後編への応援コメント

     読ませていただきました。

     筋書きや語り口はシンプルですが、三ヶ嶋さんの心情が察せられる描写が随所にあり、三ヶ嶋さんの不可解な行動によって主人公の緊張感が高まる様子も効果的に描かれていると思います。また、エーケベルグの丘という地名や、音声の出どころなどについて自然な形で解説する気配りも好印象でした。短編としての読みやすさと丁寧な心理描写を両立させており、読めば読むほど三ヶ嶋さんのつらさを思わずにはいられない作品だと感じます。
     率直に申し上げると、物語が簡潔にまとめられていることもあり、こういう展開になるだろうと、ある程度の予想はしていました。ですが、謎が明かされてそこで終わりではなく、それを受けて主人公が何を思い、考えたのかということも繊細な文章で書かれているので、予想はしていても胸に来るものがあり、しばらくこの読後感を何と表現すればよいのか分かりませんでした(そもそもこういう拙い応援コメントを書き送ってしまって良かったのか分かりません)。
     加えて申し上げると、テーマが普遍的で、最後の主人公の行動に無理がないのも、本作の魅力だと思います。といいますか、僕は個人的な経験から、三ヶ嶋さんの心中を思わずにはいられません(僕の場合は大切な人を亡くしたわけではないですが)。どんな気持ちで思い出の音声をイヤホンに入れたのか、どんな気持ちで会社用の笑顔を作り仕事をこなしていたのか、1年もの間、誰もいない真っ暗な自宅に帰って何をしていたのか……。分かりやすいきっかけがなかったにもかかわらず、三ヶ嶋さんが自分の状況を主人公に知らせる気になったからには、三ヶ嶋さん自身もこのままではいけないと思っていたのでしょう。それでも、部屋に招くまで主人公に何も話せなかったところに、三ヶ嶋さんの葛藤が察せられて、僕は苦しくなります。三ヶ嶋さんが口を噤んだまま家の電気を点けていく場面にさえ、もういいかげんに悲しい事実と向き合おう、友人である主人公の前でそれを白日の下に曝そう、という彼の思いと、そう思いながらもまだ迷いを断ち切れずにいる様子が窺える気がします。
     物語の着地も秀逸で、主人公の語りはややドライにも見えるのですが、過度に感情移入しないからこそ、三ヶ嶋さんのイヤホンを外したことにも説得力があります。それに、軽々しく説教くさいことを言わず、気長に三ヶ嶋に付き合ってやろうと考えるようなタイプだからこそ、三ヶ嶋さんは彼を選んで秘密を明かしたのでしょう。本文に明確には書かれていなくても、2人の間に確かな信頼があることが分かる、良い距離感だと思います。
     素敵な作品をありがとうございました。

     長々と失礼しました。

    作者からの返信

     あじさいさん、素敵なコメントありがとうございます。
     
     あじさいさんは自分の応援コメントのことを拙いと仰っておりますが、そんなことありません。あなたのコメントのおかげで、本作がどのように見られているのかを事細かに知ることができました。
     ああ、こういうふうに見られているのなら、あの部分はもう少し丁寧に描写したほうが良かったなぁ。もう少し文章を付け足すことによって、もっともっと深みのある作品にできたかもしれない。そう言った沢山の「気づき」を得ることができました。
     私自身まだ若輩者ですが、あじさいさんのコメントは、今後も執筆活動を続けて行こうとする私にとってとても大きな励みになりました。
     本作を読んでくれて、そして言語化された素晴らしいコメントを送ってくれて、本当にありがとうございました。