星団最強回りくどい奴の原点、アーリー達の悲しい物語。

耀聖(ようせい)

第1話 エピローグ。

この話はカラミティ星団にあるデルタリア共和国がジャンプ(亜空間高速飛行技術)を開発し宇宙探検に挑み同じ星団内の惑星クーンを発見、そこで出会った女王アーリー・メンディエタに驚愕の事実を知らされると共に宇宙技術を供与されさらに探検を進め、ディスティア帝国にコンタクトを取った際、戦火に巻き込まれ3星団戦争に発展していく。


ーー


デルタリア共和国、惑星デルタリア静止軌道上に浮かぶ宇宙ステーションを増設して作られた宇宙港。その発着ベイには真新しい1万トン級宇宙探査船チャレンジャーのエンジンに火が入り、まさに今離岸しようとしていた。その船は無人ジャンプ実験を数百回繰り返しようやく実用化した新型長距離用大型ジャンプコアを初めて搭載した探査船だ。


艦長「いよいよだな」


副長「はい、このジャンプが可能になれば飛躍的に宇宙を探検できます」


操縦士「ジャンプコア起動開始!」


Ai「ジャンプシーケンス起動、コア臨界まで20分」


艦長「うまく飛んでくれよ!」


20分後、コアが臨海に達し操舵手がスロットルレバーを引くと、一瞬の間を置いてキューン、バシューン!目の前のスクリーンに映る星々が一気に流れ亜空間に飛び込みジャンプした。この探査船は光の速度の数千倍のスピードで亜空間を抜けわずか数秒で恒星圏外の外に出現する。


艦長「アーリー様、デルタリアの探査船ジャンプ成功しました」


アーリー「うふふ、ちゃんと飛べたのね」


デルタリアはジャンプ技術を確立し宇宙探検に乗り出した。そして予定航路近くで監視していたのはステルス状態で待機していた一隻の大型戦艦、その様子を見ていたのはクーン獣人精霊女王アーリーその人だ。長いブロンドの髪、青い瞳、高身長、完璧なプロポーションを持つ絶世の美女だ。因みにアーリー以外は乗組員は全員獣人族で構成されている。艦長は熊族、副長は狼族だ。


副長「我々の恒星圏内に来れますかね」


アーリー「探査しながらだし足も短いから、3日もあれば大丈夫じゃない」


アーリーはデルタがジャンプ技術を確立する数十年前から、多種多様な電波をデルタリアに向け発信していたのだった。それを感知し宇宙探査の最初の目標は同じ星団内のクーンに決まったのだ。


副官「はい、コア技術が低いのでその程度の時間が必要ですね」


アーリー「それではクーンで待ちましょう」


「はい」


アーリーの乗る船はチャレンジャーとは反対方向に進み、レーダー圏外に出ると惑星クーンに向けジャンプして消えていくのであった・・。


ーー


そして予想通り3日後、クーン恒星圏内にジャンプアウトするデルタリアの探査船。ここまで時間が必要だったのはコアの技術が低い為だ。要するに一回のジャンプの距離が短く、ジャンプ後コア再起動に時間が必要な為だ。何度もジャンプを繰り返しやっと到着した。


レーダー手「目的の恒星圏内に入りました。目的の惑星はこの先、約100万キロ先です」


艦長「よし、慎重に向かうぞ、平和的にコンタクトが取れれば良いのだが」


「は、はい、歴史に残りますね」


最大船速で10時間後、惑星クーンまで30万キロの位置まで近づいた探査船にいきなり通信が入る。


クーン管制官「こちらクーン管制局、所属不明の探査艦国籍を述べよ。返答がない場合攻撃を行う」


通信士「わっ!か、艦長!通信が、通信が、いきなり」


いきなり入った通信に艦橋内は響めき慌ただしくなっていた。


艦長「落ち着け、なぜ我々の言葉と同じなんだ今までそんな報告は無かったぞ」


副長「あっ、そうですよね」


通信士「返答しますか」


「ああ、俺がやる。クーン管制局こちらに敵意はない、繰り返す敵意はない」


「こちらクーン管制局、そちらはデルタリア共和国の探査船だろ、女王から事前連絡を受けている」


「なっ!何故知っている」


「クーン精霊女王がお待ちだ速やかに宇宙ベイにドッキングするように座標は送る」


「わ、分かった」


副長「艦長、何故我々が来ることを分かっていたのでしょうか」


「わからん、しかし言葉も通じるし俺たちの国籍を既に知っていた」


「敵意はないようですね」


「ああ、会って確かめるとするか」


そしてデルタリア宇宙探検隊は最初に発見した惑星クーンの宇宙ベイに到着したが、隣にはクーン標準型戦艦が停泊している。自分達の探査船の何倍もの大きさで、艦長達は驚いていた。


艦長「と、隣の船は戦艦なのか」


副長「ええ、我々の探査船の10倍以上の大きさですね」


甲板員「エアロック解除します」


探査船のロックを解除するとブシューとエアハッチの気圧差で空気が送り込まれ、同調すると開けられたそこには黒いスーツ姿の狼族の男性が立っていた。


ジャガー「ようこそクーン精霊王国に、私は女王の配下、ジャガーと申します」


ダーフィット「デルタリア宇宙軍、ダーフィット艦長だ」


「それではダーフィット艦長、アーリー女王がお待ちです参りましょう」


そして見たことのない丸いシャトルに乗りクーン城に到着、アーリーとの謁見が始まった。


アーリー「ようこそクーン精霊王国に私は女王のアーリーよ。貴方達をお待ちしてましたの」


クーン精霊王国の女王アーリー・メンディエタの姿は先程の美女とは違い、40過ぎのおばさま姿。顔つきはきついが若い頃は超麗人だったと思わせる美貌の持ち主だった。


ダーフィット艦長)「初めまして、デルタリア宇宙探検隊艦長、ダーフィットと申します。我々が来ることを知っていたのですね」


「ええ、デルタリア恒星圏外に出た時に見てました」


「えっ、周りに船はいなかった筈ですが」


「ふふ、この惑星から出てる電波を頼って来たのでしょ、貴方達では解読できないデジタル信号でここの居場所を知らせていたのよ」


「そうだったのですね、ですが言葉が通じるという事は我々の技術が発展するまで待っていたと」


「そうね、とりあえず報告した方が良いのじゃないかしら。平和友好条約を結びたいと私が申していたとお伝えください」


「わ、わかりました、アーリー女王様、ここには人間はいないのでしょうか」


「ええ、獣人しかいないわ、人間は私だけよ」


「わかりました、早速連絡を取ります」


クーン精霊王国を支配していたアーリー・メンディエタ獣人精霊女王とコンタクトを取ることに成功?というか待っていた。ダーフィットがデルタリアに連絡を入れると急遽使節団を編成、そして2週間後デルタリア共和国はクーン精霊王国と平和友好条約を締結した。


アーリー「うふふ、これで条約は全て結べましたわね」


団長「はい、ありがとうございますアーリー女王様」


なにも障害もなく数日で友好関係を結べた事に疑問を持った1人の将校がとある質問した事により、女王から衝撃的な事実を宣告される。


士官「女王、迷いも無く数日で条約締結出来たのですか納得できません。クーンは平和を愛する国だと理解していますが流石に早すぎます」


「そう思いますよね普通、それは宇宙技術のヒントを与えここまで導いたのですから」


「え?、今なんと言いました・・・」


驚愕する使節団、そしてアーリーはクーン精霊王国は一万年以上前から”惑星デルタリア”に魔法陣を使い往来していた事、宇宙技術を密かにヒントを与えていた事実を話す。


「女王、とても信じられないのですが・・」


「うふふ、デルタリアに住んでいる獣人達のDNAを調べなさい、クーンの獣人と同じDNAよ普通そんなことありえないわ」


「そうですね同じDNAはありえません。ですが何故デルタリアと往来したのですか?」


「それは、精霊女王の適性と関係があるの、6精霊に愛される”次期女王”はデルタリア、クーン、フォーレストに必ず存在するのよ、その女王を探すためよ」


「フォーレスト・・聞かぬ名前の星ですが、まさかこの星団に知的生命体が存在すると言われているXNM-17のことでしょうか」


団長はカラミティ星団の探査責任者でもあり、知的生命体が生存していると思われる惑星のことを知っていたのだ。


アーリー「ええ、あなた達がそう呼んでいる惑星の事よ」


次にアーリーはデルタリアとクーンとフォーレストの関係を語り出した。数万年前カラミティ星団の中心はクーンだ。魔法技術が進んでいた当時、魔法探査を使いデルタを発見、魔法陣を構築しその惑星に向かうと知的生命体は類人猿の類が住んでいた。フロンティア精神に溢れた獣人が移り住み、良好な関係を築き共に発展していく。数百年後、獣人達の影響を受けた類人猿達は人間に昇華し爆発的に数を増やしていき、近代文明が開花すると森を切り開き精霊の数が減少していくのであった。


団長「私たちが、そのフォーレストに訪れてもよろしいのでしょうか」


アーリー「もちろんよ、ずっと以前から往来していましてよ、そのフォーレストは800年前にクーンにいたエルフ族が配下の獣人達を連れて新天地を求めて移り住んだの。今は実質的支配者になっているわ」


次にアーリーはフォーレストのことを語り出す。元々クーンに住んでいたエルフ族が魔法探査で見つけた森が深いフォーレストに800年程前に自然を求め移住した。その理由はクーンも発展した際、デルタほどでは無いが森と精霊が減少。悪いことに魔法技術も衰退、魔法適性者の出現率が悪くなり生活環境向上を目指したのだ。だがプライドの高いエルフ族はフォーレストを一つの国として認め内政干渉をしないことを約束して移住したのだった。


アーリー「それでね、頼みがあるの」


変化を好まないフォーレストは移住当時から複数の部族を形成し、それが小さな国としての役割を担っていた。そのことで争いが絶えず部族間闘争を繰り返していた。その解決策として一つの国としてまとめ上げ、代表を決め争いを収めて欲しいとアーリーが要請したのだった・・・。


「わかりました使節団を送る事にします」


「お願いね、あの国をまとめてくれるかしら、これは良い機会だと思うの」


「女王自身が統治出来ないのですね」


「ええ、分かれる際の約束がありますので」


そして半年後、使節団はアーリー女王の親書を携え惑星フォーレストを訪問、実質的指導者クララ女王と面会を果たし、翌日、友好条約を終結させる。その後フォーレストに存在するそれぞれの種族、部族の代表者を一同に集め数か月の議論を経て、惑星の代表者を決める合意に至った。


議長「投票結果をお知らせします、フォーレスト初代代表者はクララ女王と決まりました」


直後、代表者の選定が始まり各部族の首長による選挙を経て、代表者に選ばれたのは統治能力に優れたエルフ族のクララ女王に決まった。それから1年の時を経て細かい部族間の争いを鎮め新憲法を制定。そして代表者のクララ女王はフォーレスト王国と命名した。ここカラミティ星団に新しい王国が誕生した」


ーー


デルタリア共和国使節団はフォーレストとの平和条約の全てを結び終えたころ、同時にクーンに対し通商問題を残しその役割を終えようとしていた。


団長「それでは失礼します、再来週引き継ぎの貴族が訪れる予定です」


諸問題が片付き、使節団はそそくさと出発しようとしていた。


アーリー「あら団長、もう少しゆっくりしていけば良いのに」


団長「議会への報告もありますし、通商問題はまだ当分時間が必要なので策を練ってまいります」


「次に来る貴族の方は有能な方なのかしら」


「ええ、クーンに興味があり貴族大学を主席で卒業した若い貴族の青年です」


「あら、新米貴族なのね実務者の方が助かるのに」


「アーリー女王様、私の呟きとしてお聞き下さい。平和条約を結び次に通商条約を結ぶまで誰も来たがらないのです」


「なるほど、数百年経っても貴族は変わらないのね、わかりました」


少しつんとしたアーリーの態度には理由があった。それはアーリーが”お歳”を召されていたので”現金”な貴族たちはクーンの特使になることを極端に嫌がっていた。通商折衝が始まる間の中継ぎとして下級貴族の青年が特使として選ばれる。


>>>


この物語はデルタリア王国がクーン精霊王国との深い関わり合いを描いた物語。「星団最強なのに回りくどい奴」の物語に出てくるアーリー女王のことをメインに描いた物語です。

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