2011年11月26日(土)

2011年11月26日(土)


友人とふたり、一泊二日の旅行へと出かけた。

うにゅほは留守番である。

気の置けない友人とは言え、男だけの旅行にうにゅほを連れて行くのは、たぶん互いによくない。

胸の前でちいさく手を振るうにゅほに「行ってきます」と告げ、出発した。

目的地は羽幌炭鉱周辺の廃墟群である。

凍りついた山道に、助手席で戦々恐々としていると、携帯電話が震えた。

「どこ」

うにゅほからのメールだ。

うにゅほには携帯電話を持たせている。

けれど、おおよその時間を共に過ごしているため、メールを受け取ったのは初めてだった。

できる限り丁寧に返信し、友人との会話に戻った。

次のメールは、夕飯を食べた後だった。

「どこ」

羽幌の道の駅だよ、と返した。

次のメールは、温泉に浸かり、ホテルの部屋へと戻ったときだった。

「どこ」

ホテルだよ、と返そうとして、ふと思い出した。

携帯電話を買ったとき、うにゅほに「電話は用事があるときに掛けるんだよ」と教えたことを。

俺はうにゅほの携帯に電話をかけた。

うにゅほと三十分ほど、他愛ない報告や世間話をしたあと、電話を切った。

そしてメールで「電話は相手と話したいと思ったときに掛けるんだよ」と送り、床についた。

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