第21話

 ジェードは慌ててスマートフォンを確認した。

 その画面をスワイプする。表示されたのは一枚の写真だ。

 其処には一体のエア着ぐるみが映り込んでいた。

 確かに、それは、アルマンディンの部屋に入り込んだ着ぐるみと全く同じである。もう一度スワイプすると、何体か、同じものを発注していたと言うデータも入っている。


「これだ。これが一体無くなったということは……」


 もう決まりじゃないかな、とでも言いたげに、チャロアイトが目を向けて来る。

 ルチルが発注を掛けた着ぐるみがアルマンディンの殺害に利用された。犯人はルチル。

 仮にルチルでないとすれば、犯人はルチルが発注しておいた着ぐるみを盗んで、それをわざわざ着たことになる。なかなか考え難いのではないだろうか。利用するメリットも無い。

 ルチルは黙ったまま目を閉じている。


 その頃、ウヴァロヴァイトは未だ、オパール、真珠、クンツァイトの四人で食事を摂っていた。


「やることが無くて大変退屈だな。ジェードたち……彼奴等は何をしているんだ」


「逃げたのでは無かろうか? 誰も来ないし、連絡も無い」


「待っている方の身にもなって欲しいものだ」


 しかし、ウヴァロヴァイトは腰を上げない。両手を組み、指をくるくると動かして沸き起こる怒りの感情を分散させる。

 クンツァイトの言うことにも一理はある。それでも、ジェードが逃げようとしたならルチルが始末している筈だ。騒ぎも広まっている筈。此処は何の変化も無い。誰も入って来ない。辺りは静かで、遺体は転がっている。矢張り、自ら動く理由にはならない。


「何かめぼしい話は無いか。ああ、そうだ」


 丁度、プリンを食べ終えたばかりのスプーンで、真珠を指した。

 そう言えば、私もアルマンディンの死について、私なりに調べると言うことだった。


「お前、此処にいない奴のことでも良い、何かアルマンディンの捜査の進展にはなるかもしれない。知っていることを話せ」


「チャロアイトは凄いんだよ」


 この真珠の前置きを聞いたとき、そこにいた皆が「いや、お前も結構凄いけどな……」と思ったが決して口を開かなかった。


「チャロアイトは正義の味方だからね……中学生の時に、いじめられてた子を助けようとしたんだ」


 真珠が聞いた話では、チャロアイトは、中学生の時、クラスの委員長に選ばれたらしい。まず、クラスに委員長があることをよく知らないウヴァロヴァイトにしてみれば、猿山の大将を選ぶみたいで、所詮は委員長も委員もみんな猿なのだからアホらしい制度に感じたが、真珠が作った制度ではないから指摘をしても仕方ないので聞き流していく。


「そのクラス委員の時、頑張ってクラスの虐めっ子を改心させようとしたんだって。優しいよね。良い人だよね……でも、結局虐めっ子って言うのは、一人のターゲットを虐められなくなったら、他のターゲットを探すものなんだ。だからもうキリがないと思って、最終的には教室ごと木っ端みじんにしたんだって。本当かどうかは、分からないけれどね……」


「ただのどうしようもない馬鹿にしか聞こえないが……」


 遂に口を開いてしまった。

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