2にゃ にゃんこの右腕。レイン


 レインは、至って普通の魔族だった。

 仲間と悪い事をして、人間を殺して、女を奪って、そんな生活を続けていた。

 あの出会いがあるまでは……。



★♡★♡



 その日はいつも通り、悪をして、仲間と酒を飲み家に帰った。

 ベットで寝ようとしたら、布団の上に猫がいたのだ。

 それも子猫。


 私は迷った。

 魔族の中では、猫はとても貴重だ。

 この猫を魔王様に献上したら、生涯使い切れないほどの金を貰えるだろう。


 だが、それでいいのか?

 普段悪い事ばっかしてる自分が、

 間違っていないのか?


 そんな事を、この愛らしい猫を見ていたら考え込んでしまった。

 

 ある魔族の昔話に猫が魔族を救ったと言うものがある。

 私はそんな事あるはずがないとバカにしてきたが、

この猫を見ていたらそれも、本当ではないかと思ってしまう。


 決めた。 

 私はこの猫を魔王にして、魔族を変える。

 そして、この猫についていく。


 そう決意してからは早かった。


 現魔王を家族で脅し、その座を立ち退いてもらった。

 その後に勃発した魔王争いの時は、各有力な魔族を買収した。

 その他いろいろやり、猫のミーニャ様を魔王にできたのだ。

 もっともミーニャ様は、私が悪い事をして魔王にしたことを知らない。

 ミーニャ様は知らなくていい。



★♡★♡


 

 そして時は一週間前、私はミーニャ様にある王国に挨拶へ行って欲しいと頼んだ。

 そしうしたら、


『いやにゃ!!挨拶にゃんて行かないにゃ!』

『我はぐうたら生活したいにゃ!  

 人族なんかの王国にゃどいきたくにゃい。

 っあそうにゃ

 レインが行けばいいにゃ!』

『じゃあ頼んだにゃ』


 と半ば強引に頼まれ私は、プリータ王国に来ていた。

 ここには、近くに港町があり、ミーニャ様大好物のカテオが多く取れるそうだ。

 なので、ミーニャ様のご機嫌のためにも私は、カテオの輸入を成功せなければならない。


 そう言えば、共に来たバークはここに着くやいなや『っふ……。俺は今から……戦場に行ってくる』と言い、路地裏へ消えていった。


『健闘を祈る』


 そう言った時の、バークの目ん玉が飛び出そうな顔が不可解だったが、私は彼の帰りを待つだけだ。



♡★♡★



 王国に挨拶するという事は

 王に謁見すると言う事だ。

 謁見と言っても、当日にはできない。

 色々な手続きが必要なのだ。


 なので私は現在、暇だったという事もあるが、もし交渉が上手くいかなかったときのための下見として、港町に来ている。


 宿屋からここまで、徒歩30分程の距離だ。


 ここの大通りは、王国より人が溢れかえっているように思える。

 露店が並んでおり、魚を売っているようだ。

 私は通行人と肩をたびたびぶつかりながら、お目当ての港に着いた。


 そこには一本の大木でできたであろう、船が海に5つ並べられていた。


「ふむふむ……」 


 木に、繊細な魔力の込め方をしている。

 この船を作った人をぜひとも魔王城に勧誘したいところだが、今は違う。


 漁師を探しに来たのだ。

 だが、辺を見渡したが漁師らしき人はいない。

 周りには私と同じような観光客が、船を見ている。

 

「はぁ……仕方ない」


 自身の目に魔力を込める。

 私の持つ魔眼は、魔族最弱とも呼ばれている特定のものを探すことができる魔眼。

 戦闘には役に立たないが、こういう時には最適な魔眼だ。


 だが、できれば使いたくなかった。

 これを使った後、目が痛くなるんだよね。


 気配で、船には人がいない事は分かっている。


 漁師の前に、せっかくだからミーニャ様っと……。

 おぉ〜なんとも神々しい寝相。

 これは……エビか?

 お!なんと!

 耳がピコピコ動いている。

 まさか私が見ていることに気づいたのか……?

 さすがミーニャ様恐るべし!

 

 ふぅ……。

 違う。違う。

 

「漁師……漁師…………ん?えっと……?」


 白髪頭のお爺さんが私の前に立っていた。

 魔眼を使っていて、目の前に人がいた事に気づかなかった。

 慌てて魔眼をとじ、相手に尋ねる。


「何だ貴様!!船荒らしか!?」

「いえいえとんでもない。

 私はただの観光客ですよ。

 ほら、船って珍しいじゃないですか?」


 弁明したが、爺さんは鋭い目つきで私を見てきた。


「わしに嘘は通じんぞ……。

 さっき僅かだが、お前の目から魔力を感じ取った……。

 魔眼持ちの魔族が、こんなとこで何企んでるのじゃ」 

 

 私の魔力に気づいたのか。

 この爺さんヤる人か……。


「あぁ〜バレちゃってましたか」

「やはり貴様ぁ!!」

「ちょっと待って下さい。

 私は漁師さんを探してただけですよ?」

「漁師など探してどうするのじゃ!

 っは!もしや……魔族の餌にするつもりじゃな!?」

「え?いや……違います」

「言い訳無用!覚悟ぉぉ!!」

「っと!」


 持っていた釣り竿を、一瞬にして、振り下ろしてきた。

 この速度

 人族にしては、速い。

 だが私には、見える。

 それを、左手で受ける。


「な、なんじゃ……と。

 わしの一振りを……こうも容易く……」

「さっきも言いましたが、戦いに来たんじゃないんですよ」


「……………じゃあ何しに来たんじゃ?」


「漁師さんとの繋がりをつくる為に」

「ふん……好きにせい…………」


 爺さんは私が簡単に攻撃を受けたのが気に食わなかったのか、唾を吐きながら何処かに行ってしまった。


 私にはあんな爺さんどうでもいい。


 再び魔眼を使い辺りを見渡す……。

 すると、路地裏の方だろうか薄暗い道に漁師がいた。

 その人が魔眼から、見えなくなったので

 私は慌てて後を追いかけた。

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