第24話 ~凪~

僕は野良だ


好きに飛びだす

好きに来る


僕は少し前に

同種と喧嘩し怪我をした


助けを求めたカフェで

大きい人に病院に

連れていってもらい

手当をしてもらった


人間の決まり事なのだろう

動物を助けると

それを保護をするか

飼わないといけないらしい


当然の流れで

カフェの大きい人も

僕を飼うよう

動いてるようだ


飲み物が欲しくて

カフェに立ち寄ると

お水や牛乳の入れ物が

使わなくなった食器から

猫用の可愛いものに

変わっていたり


よく分からない

ブラシみたいなもので

尻尾をつついてきたり

頭をトントンする


むううう・・・

何してるのぉ・・・


明らかに不機嫌に尻尾をふると

大きい人はすぐやめる

でもまたすぐにやりたがって

ソワソワしている


にゅううう・・・

落ち着かないっ


僕は飲むのをやめて

プイッと外に出る

ポテポテと歩き

獲物を探し始める


川べりの草むらにいって

バッタやトカゲを追いかけ

疲れたらゴロンと横になる


仰向けになって

大きい青空を見たら

雲が薄く広がっていて

僕はなんだか寂しくなった


飽きたなぁ・・・

カフェに行こうかな・・・


来た道をポテポテと戻る

少し歩いた先に

またカフェが見えてくる


相変わらず半開きの窓

飛び乗ってもいいけど・・・

僕は思いついて

店の裏に回ってみた


勝手口の隣にエアコンの室外機が

ブーンと音を放ち回っている

生ゴミ用の青いポリ容器が2つ

休憩用なのか

丸椅子と灰皿があった


おー・・・

秘密基地っぽいー


エアコンの室外機に乗り

辺りを見渡してみる

更に裏手に続きがありそうだ


うっへへぇ!

探検だー!!!


塀と建物の間に

子供が1人通れそうな

狭い空間があり

僕はそこに突入した


壁をよじのぼり

塀に着地する

住宅街の少し上なのかな

家々が並んでいるのが

広々と見えた


おおー・・・

土手の上なんだここ・・・


店の正面から眺めれば

キラキラとした川

店の裏手から眺めれば

規則的に並んだ住宅街


すっごいなー・・・

風が気持ちいいし

とことん居心地がいい

このカフェは・・・


目を細めて

ボーッと眺めて

僕のヒゲが

そよそよと凪いだ


「危ないぞ」

「降りなさい」


後ろから大きい人の

低い声がした

物音で気づいたのだろうか

僕は塀から降りて

大きい人の足元に座った


ねーねー

この場所好きなの?

どうしてここにしたの?


ニャーニャーと鳴く僕に

大きい人は答えないが

一言だけ言った


「いつでもおいで」


僕は黒猫だ


ごちゃごちゃしたとこが

大好きなんだ

でもその後ろには

広い光景がある


意外な発見をすると

とても嬉しくなる

一瞬だけ影から

解放される気がして


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