第22話 ~楽~

僕は野良だ


好きに出会う

好きに楽しむ


狩りをして少し疲れ

眠りに眠ったあと

暇を持て余した僕は

再び周辺探索に出た


大きい人のカフェを過ぎて

歌うたいの駐車場を抜けて

家々が規則的に並ぶ

住宅街へ向かった


小高い土手を降りると

目の前にゴミ置き場が見える

ネットに覆われたそれを踏んで

塀に登ろうとした時 僕は滑って

向こうの空き地に落ちてしまった


うーいててて・・・

あれから調子悪い・・・

まだ治ってないのかな・・・


<ねーちょっとー!>

<大丈夫ー!?>


心配する声が聞こえた

声の方を見ると

遠くの方にグレーで毛の長い

可愛らしい猫が見えた


・・・大丈夫だよー!


前の一件で警戒しつつも

僕は声の方へ行く

あちらもこっちへ

足早に向かってくる


<やっぴやっぴ!>

<派手に落ちたね!>


いやー、見られちゃったねぇ


<見らん猫やね!>

<どっから来たん?>


商店街の方から・・・

狩場変えようかと思って

でも色々あってさ

その、縄張りとか・・・

あるのかな・・・


<縄張りとか考えんでよかよ!>

<強いていえば地球のもんやん!>


お、おお・・・なるほど・・・

考え方が大きいね・・・


優しくて可愛くて元気な猫だ

僕はほっと一安心した


<私はこのへんで>

<人間たちの世話しとると!>


え?お世話してるの?

君が?


<人間達は色々大変やけね>

<私が見ちゃらんとね!>


へぇー・・・そうなんだ!

なんか今までと

全然違うなぁ・・・


<今まではどうか分からんけど>

<ここはここ!>

<楽しんだらよか!>


そうだねぇ

ふふ、なんか

楽しくなってきた!


<色んな事があるけ>

<楽しんだもん勝ち!>


・・・そうだね!

ありがとう!


<ウチはピンキィばい>

<あんた名前は?>


ん・・・

・・・ないよ!

好きに呼んで!


<わかった ノラね!>

<宜しくね>


よろしくねぇー!!


<今度パーティーでもしようかね!>


ほんとにー!

わぁい!


少しだけ元気になった僕は

また警戒を緩めた

野良としては

本当に駄目な事だけど


猫も色々だよね・・・

良かったり悪かったり


僕の見る目はまだまだだ・・・


僕は黒猫だ


影ばかり潜んで

隠れているから

日向はとても眩しい

強くて怖い光

柔らかい光


僕にとっては

分からない事ばかりだ

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