新章 川原の陽だまり

第19話 ~飲~

僕は野良だ


好きに彷徨う

好きに飲む


関係ない場所に行こう

僕はそう決意した


野良は野良なりに

場所なんか決めない

狩りができれば

どこだっていいんだ


商店街を通り抜けて

公園を通り過ぎて

駅の方へはいかず

人が少ない方へ


とにかく見た事のない

そんな所へ


どのくらい歩いたかな

疲れてきた・・・


やがて大きな川が見えてきた

緑の木々が並んでいて

水面がキラキラしていた

春には桜が咲くのかな


ふーん・・・綺麗だなぁ


広がっている草むらに入る

木陰が涼しくて

獲物がたくさん居た


ここ良いなぁ・・・


しばらくここにしよう

そう思った僕は

周辺の探索に出た

危険なところは

確認しておかないとね


歩き回っているうちに何処からか

美味しそうな匂いが漂ってきた


なんだろう・・・?


匂いをたどると

小さい可愛い建物があった

少しだけ空いた窓から

音楽が流れている


窓に飛び乗り中を覗く

少し古いカウンターに

4つのイスが並び

テーブルセットが2つ


カフェかな?

いい匂い・・・


匂いを嗅いで

ボーッとしていたら

後ろからいきなり

首根っこを掴まれた


えええええ!!!!

な、なに!?


突然掴まれて驚き

激しく暴れる僕を

大きな手が抑える様に

包み込む


「・・・猫か・・・」


エプロンをしてる

大きい男の人が

小さく呟いた


うん、僕は猫だね・・・

って、ちがうのー!

そうじゃないのー!

離してよー!


「まあ、中に入れ」


暴れても 引っ掻いても

動じない男の人に

店の中に連れていかれて離された


僕はすぐにカウンターの下に

逃げ隠れた


なに・・・なんなの・・・


ブルブル震える僕の前に

お皿に注がれた

牛乳が差し出された


「猫に牛乳は良くないが」

「今はこれしかない」


え・・・と・・・

飲んでいいの?


恐る恐る舐めると

ほんのり冷たくて甘かった


・・・美味しい


長く歩いたせいで

喉が乾いていた僕は

夢中で飲んでしまった


大きい男の人は

それを見下ろしながら

薄く優しく笑っている


あ、この人良い人だ(*ΦωΦ)


飲み終わった僕は

逃げようか迷っているうちに

疲れて眠ってしまった


まぁいっかぁ


野良にはあるまじき事

警戒心を解いてしまった


僕は黒猫だ


日向に出されると

少し緊張する


どうしても影に

逃げたくなるから

カウンターの下に居たいんだ

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