騎士団長の息子現る
湯浴みから戻った俺は自室でまったりして今後の事を考えていた。
病気になった設定にして……学園を何ヶ月も欠席、その後にそれを理由にこちらが一方的に悪いという事で婚約破棄をしてもらう。
女性としてはかなり風聞の痛手を被るし結婚はもう諦めるしかないだろうが、むしろ俺からすればそれの方が渡りに船だ。
初夜なんて迎える事は必要がない。
まず侍女たちを落とし、その後は町へ繰り出して町娘たちとも遊ばなければならないのだから!
使命感にも似た何かに俺は燃え、先の展開を考えまくる。
昼食をとり、さらに思考を巡らす。
男爵令嬢の話をすればそちらに手を回すだろうし、それによって公爵家が没落ルートに行く可能性もある。
俺の百合ハーレム化計画のためには没落してはその夢は絶対に達成されない。寧ろ知識チートや料理チートを使って我が世の春を築きたい。
コンコンッ
「お嬢様、お客人がいらしてます。前触れがなかったために少しお待ちいただく事も可能ですが……。アレックス様が来られています」
ドアがノックされたと思ったらロザリーがそんな事を言って来た。
アレックス……。馬鹿第一王子の取り巻きで騎士団長の息子。昨日のあの場面にも後ろに控えていた。
アイツが一体なんの用なんだ? 腐っても伯爵家の跡取りなので合わないわけにはいかないだろう。
しかしどうしよう。曲がりなりにも体調不良で学園を欠席している。まあ皆、俺が王子にされた事と男爵令嬢ごときに面子を潰された事で休んでると思っているだろうが……。
少し悩んだのちに、この部屋に来てもらう事にした。当然2人きりになる事はないのでドアを開けてロザリーにも控えていてもらうつもりだ。
「この部屋へお連れしてもらえる? 体調不良で休んでいるのにその初日に自分の家の中とはいえ、歩いて面会に行くのはおかしいわ」
「はい、わかりました」
「オリビア嬢。体調は如何かな。欠席したと聞いてね。お見舞いに来たよ」
「まあ、アレックス様。嬉しいですわ。今朝、起きるとどうも体調が優れませんで学園の方は休ませていただきましたの」
「そうか。何か無理がたたったのかもしれないな。精のつくものも持って来ている。夜にでもご家族と食べてほしい」
いや、体調が悪いって言ってんのに精のつくものってなんなん? 体を鍛えすぎて脳ミソまで筋肉なの?
騎士団長の息子だけあってコイツの体は凄いんだよね。もう筋肉モッリモリ。
いや待てよ、精がつけばロザリーともっと
グッジョブだったよアレックス! でももう帰ってくれないかな。
「ありがとうございます。優しいのですね」
「……ッ。オリビア嬢。俺は……! 昨日はすまなかった。あの男爵令嬢の振る舞いは淑女としては良くないものだったのに、俺は注意する事もできずに」
えぇぇ~? まとも……な事を言っている? あれ? そう言えば騎士団長の息子なんて完全に攻略対象っぽいのに、攻略対象ではなかったような?
「アレックス様。良いのです。お気遣いくださってありがとうございます」
「オリビア嬢……!」
アレックスは急に立ち上がり俺に近寄ると手を握ってきた!
ひぃぃ。どしたん。どうしたん。
しかも手を握られた時に彼の後ろになぜか薔薇のエフェクトが起きていた。
そのエフェクトヒロインが攻略者と会話する時にでるゲームの仕様ですやん。
えぇ? いったいどういう事? お。落ち着け俺。まずは手を握られている事が問題だ。男爵令嬢の行いが良くないものだと分かっていて、第一王子の婚約者の手を取るのは良いと思ってるのか?
やんわりともう片方の手で俺はアレックスの手を自分の手からふりほどく。
「あ、ああ。すまない。気持ちが高ぶってしまって」
だから薔薇ぁ。何でそこでそのエフェクト出てくるのん?
「いえ、私の事を気遣っての事うれしいですわ」
「そ、そうか。今日はこれで失礼する。早く体調を戻して学園に戻ってほしい」
顔を赤らめてアレックスがそんな事を言う。ははんっ。俺は察しが良いからね。鈍感ではない。コイツ、俺の容姿があまりにも綺麗だから見惚れたな。
だが断るっ!!
「はい。お気をつけてお帰りになって下さい」
ふぅ~。まあ社交辞令を言うくらいは俺にだってできるのだ。
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