策士

 コンコンッ


 ノックされた後にドアが開く。


 「おはようございますお嬢様。お加減はいかがでしょうか?」


 「おはよう、ロザリー。少しだけ泣いてしまって瞼が重たいの。だから朝から悪いんだけど、湯あみがしたいわ」


 俺はうつむきながら、悲しげに侍女に言う。既に俺の百合ハーレム計画は発動しているのだ!


 俺が泣きはらした原因は自分のフランクフルトが無くなっていたせいなのだが、侍女はきっと王子の対応のせいだと親身になってくれる事だろう。


 「わかりました。すぐに湯あみの支度をしてまいります」


 「あ、それと学園には今日からはもう出席しない事にするわね。体調が思わしくなく、通えないとでも理由をつけて、誰か他の者・・・に学園に知らせるように言っておいてもらえるかしら」


 「お嬢様っ」


 俺が悲しみに暮れていると思って、ロザリーは俺の心情を勝手に慮っておもんばかって顔をしかめて悲痛にしている。


 今の俺の頭の中はピンク一色なんですけどね。


 前世の日本では考えられなかった事だが、この世界……というかまあ前世でも中世の貴族とかは同じ状態だったのだろうとは思うが、なんと湯あみに侍女がついてくるのだ!


 そう。それはどういうことかと言うと、着替えは勿論、体の隅々まで洗ってもらえるのだ。


 俺が学園を欠席するという話をロザリーではなく他の者・・・に連絡をさせに行かせたのは、そういう理由があったからだ。


 美人とお風呂でイチャイチャしたいんだ!


 

 しばらくすると、湯あみの用意ができたようでロザリーが呼びにきた。


 待っている間、俺のポークビッツ……フランクフルトは激おっきぷんぷん丸だったよ。


 いやないんだけど。あったらきっとそうなっていた。


 

 長い廊下を歩いていると若い執事とすれ違う。


 「お嬢様、体調の方はいかがでしょうか?」


 黒目黒髪で容姿の整った執事長の息子。乙女ゲームのヒロインの攻略対象で俺を裏切る一人。「お嬢様の心は貴族に染まりきっていてドス黒く汚い。それに比べて○○ヒロインは心清らかな天使」とか言っちゃうんだぜ?


 いやそのヒロイン、お前含めて何人に股を……。俺なんて前世も今世もまっさらですよ! さらっさらですがな。


 だいたい、貴族令嬢が平民と同じように遊び歩いたり異性と話したり触れ合う時点でおかしいのはそっちだからね?


 その心清らかな天使も曲がりなりにも養子でとは言え男爵令嬢なわけですよ。マナーの教育すら受けていないのはそっちだから~。


 俺はそう心の中で悪態をつく。親父がコイツの父親を信頼していなければ、俺の権限で辞めさせることだってできたのに!


 まあ良い。今はそれどころではない。一歩後ろをついて来ているロザリーの巨乳を早く堪能しなければいけない。


 俺はそんな使命にも似た気持ちを持って湯あみに向かうんだ!


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