6、村長は強い



「おい女! お前ちょっと綺麗な顔してるからって、勇者ゴンズ様を舐めてやがるのか!」


 勇者ゴンズと名乗るかなり大柄な男と、可愛いメイド服の受付嬢。


「私の仕事は受付だ、お前の酒の相手ではない!」


 胸を張り勇者ゴンズに言い放つ受付嬢。


「ランキング一位のこの勇者ゴンズ様が酒の尺をしろって言ってるんだ、喜んでこっちに来やがれ!」


 38階までクリアーした、あの勇者ゴンズ。


「うるさい! 弱いくせに喚くな!」


 折れない受付嬢。


「どうしたのだ?」


 騒ぎを聞きつけ、現れたカークス村の村長。


「テメェの所はどんなしつけ方してやがる! 責任者を連れて来い!」


 胸ぐらを掴み村長を持ち上げる勇者ゴンズ。


「‥‥‥余が村長、責任者でありますが?」


 持ち上げられ宙に浮いたまま村長。


「テメェのそのスカした態度も気に入らん!」


 勇者ゴンズは村長を投げ飛ばして剣を構えた。

 

「この勇者ゴンズ様を甘くみやがって、叩っ斬ってやる! そこの女、村長を殺したら後でたっぷり可愛がってやるからな!」


「‥‥‥お客様は、もうお客様ではありまぬな」


 投げ飛ばされた村長は、ふわりと床に着地し、勇者ゴンズを見た。


「よく来たな勇者ゴンズ、二度と歯向かえぬよう、其方にこの世の物とは思えぬ絶望を味合わせてくれるわ」


 勇者と村長の壮絶な戦いが今始まる。






「捨ててきて」


 勇者ゴンズの亡骸を指差し村長。

 壮絶でもなんでもない戦いだった。


「教会に持っていくべきではないですか?」


 村人Aと村人Bが勇者ゴンズを抱え答える。


「‥‥‥まあ良い。神父メリルによろしく言っておいてくれ」


 料金的な意味で。


「では!」


 勇者ゴンズの屍を抱え、村人Aと村人Bが退出する。

 

「大丈夫であるな?」


 メイド服の受付嬢の方を向く村長。


「怖かった!」


 ピョンと飛び跳ね村長に抱きつく受付嬢。


「‥‥‥嘘をつけ」


 しらっとした目の村長。


「助けてくれたのは本当に嬉しい!」


「‥‥‥其方、最近余にしがみつき過ぎではないか?」


「癖になった! ‥‥‥嫌か?」


「‥‥‥嫌ではない」


「ならば良し!」


 ニコリと微笑む勇者マルチナ。



 カークス村の村長は恐ろしく強い。

 一部始終を見ていた、他の勇者達から広まった噂であった。





 

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