3、その服、男ウケするのか?



「違うのだ、其方らは本気を出しすぎだ」


 村長の間、玉座に足を組み座る村長。


「しかし魔王様、勇者が攻めて来るのですぞ、我ら魔王軍は‥‥‥」


「余のことは村長と呼べ」


 平伏す魔王軍の精鋭達に村長がピシャリと言い放つ。


「‥‥‥では村長様、どのように戦えばよろしいのですか?」


 先頭の炎を纏わせた騎士が頭を垂れる。


「負けろとは言っておらん、圧勝しては駄目なのだ。次は勝てそうだ、あそこで違う行動をとっていれば勝てたかもと思わせるように、ギリギリ勝つのだ」


「何の為にで御座いますか?」


「‥‥‥リピート率が上がるであろう?」


 キョトンとしながら村長。


「‥‥‥はっ!」


 魔王軍の精鋭達は村長の命を受け、ダンジョンに消えて行った。


「魔王様、頼まれていた品をお持ちしております」


 魔王軍の精鋭達が持ち場に帰るのを見届けてから、翼の生えた魔族が村長に話しかける。


「お主も村長と呼べ」


「‥‥‥私もですか」


 跪くガーゴイルは苦い顔。


「現在、余は村長だ」


「‥‥‥相変わらず村長は融通が効きませんな」


「‥‥‥馬鹿にしてる?」


「いえ、尊敬しておるのです」


「‥‥‥下の宝物庫に入れておいて」


 ガーゴイルが持って来たのは、魔王城にあった宝物の数々。


「ダンジョン経営とは金がかかりますな」


「初めは稼がせておいて、後でそれ以上に回収する。その為にはまず餌となる宝がいるであろう」


「そう上手くいきますでしょうか?」


「‥‥‥人間は欲深い、必ず食いつく」


 ガーゴイルは頷くと、宝物を抱え部下と共に部屋を退出した。





「何故ダンジョンに受付があるのだ!」


「ダンジョンのルール説明と入場料を貰う。後、受付をせんとどんなパーティーが中におるかわからんから、骸の回収に行けないではないか」


 受付に立つ勇者マルチナに説明する村長。


「では何故、私が受付なんだ! 私が付いてまわるのがそんなに嫌なのか?」

 

 不貞腐れる勇者マルチナ。


「其方は顔の造形が良い。受付は美しい娘の方がウケるであろう? 受付の募集もしておるから新人が入るまで暫く受付を頼む」


「‥‥‥もう一度言ってくれ!」


 俯きながら勇者マルチナ。


「‥‥‥新人が入るまで暫く受付を頼む」


「違う、その前!」


「‥‥‥其方は顔の造形が良い。受付は美しい娘の方がウケる」


 キョトンとして村長。


「私はずっと貴方と一緒にいたいが、そこまで言うなら仕方ない。少しの間なら受付をしてやろう!」


 モジモジしながら勇者マルチナ。


「‥‥‥頼んだ。後、この服を着てくれ。人間の男にウケが良いらしい」


 村長が取り出したのは、いわゆるバニーガールの服。


「そんな布地の少ない服が着れるか!」


「‥‥‥豪華なマントは着れるのに?」


 派手なマントに身を包む勇者マルチナを見ながら村長。


「これは貴方に貰った大切な物だ!」


 マントを大事そうに摩りながら勇者マルチナ。


「この服も余からのプレゼントだ」


「そうか、プレゼントか! やはり貰っておく!」


 布地の少ない服を村長から奪い取りニコニコする勇者マルチナを見て、ニヤリと笑う村長。


「では明日からその服で頼む」


「それは嫌だ!」


「‥‥‥頑固であるな」


 受付で揉める村長と勇者マルチナ。


「マルチナ、夫婦喧嘩は家でやりなさいよ」


 バニーガールの服を着た、武器屋レナと神父メリルが颯爽と現れた。


「2人共、そんな格好で恥ずかしくないのか?!」


「村長さんに言われたので着ています」


「わりと動きやすいのよ」


 ポーズを決める武器屋レナと神父メリル。


「‥‥‥私には無理だ」


「マルチナも着てみな、すぐ慣れるわよ」


「‥‥‥肌を晒すのは、夫になる男だけだと昔から決めている!」


 勇者マルチナの罵声が響く。


「吟遊詩人には全てさらけ出した癖に、今さらカマトトぶるの?」


 ニヤニヤと悪そうな笑みの神父メリル。


「あの男とは手を繋いだだけだ!」


「そうなの?!」


 驚く2人。


「それ以上は結婚してからだ!」


「マルチナ、あなた身持ちが固いのね」


「‥‥‥そろそろよいか? それで着るのか着ないのか?」


 3人の女子トークを黙って聞いていた村長が口を挟む。


「人前では着ない‥‥‥2人の時なら着てやる!」


「‥‥‥それでは意味がない」


 派手なマントの中にくるまり、モジモジする勇者マルチナであった。

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