灰被りの毒林檎 〜大人気アイドル・雨城怜未のシンデレラストーリー〜

黒崎吏虎

第1話 栄光の裏で

 その輝きはまさに「彗星の如く」と言って、差し支えないだろう。


そんな強烈な光だった。


地下アイドル・『winners circle《ウィナーズサークル》』のエースである雨城怜未あまぎれみを一目見た瞬間、確かにそんなスター性を感じたものだ。


このライブを見ていた、当時ツジテレビ局の若き局員だった妹背宗馬いもせそうまは、彼女をテレビタレントとして抜擢することを上層部に進言した。


パッチリとした大きな目、弾けるような笑顔、サラサラとした黒髪ロングに圧倒的な歌唱力、そして司会のターンでは突飛的な、ぶっ飛んだキャラクターというギャップで人気をファンの間で不動のものにしていた。


そしてその「光」は地下アイドルで終わっていい器ではないことを。


二週間にわたるプレゼンの末、深夜番組で彼女を紹介すると、SNSで爆発的な反響を生むことになった。


「噂に違わぬ美少女だ」、「間違いなく売れる」……そんな肯定的な言葉で綴られていて、「winners circle」はメジャーデビューが決まった。


宗馬がたまたまそのライブを見ていなければ、この雨城怜未という強烈な才能が光を浴びることはなかっただろう。


その証拠が深夜番組で見せた、どんな問いにも物怖じせず、積極的に身体を張る姿という堂々とした振る舞いなのだ、と宗馬はその時に感じ取ったのである。


その後も彼女は、ゴールデンにも僅か2ヶ月で進出するなど、一躍人気者になるのであった。




だが、そんな怜未だったが、栄光を掴み取っていた裏で苦しんでいた。




ライブ後や収録後に、トイレで独りで吐くほどのからだ。




「灰被りの天才アイドル」雨城怜未。


彼女の過去は、壮絶そのものと言っても過言ではなかった。


怜未は如何にして成功を収めることが出来たのか。


それを紐解くカギとなるのが「母親の存在」なのである。


宗馬はあることがキッカケで、怜未の過去を知ることとなるのであった。

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