競輪の神様と非実在の競輪予想師 パート2

鉄弾

第1話 あれ?このパターンって・・・

 静所おとなしアリサ、二十五歳。立川市在住の飲食店アルバイト従業員使である。そんな彼女の楽しみの一つが競輪観戦だ。


 今日はシフトで仕事が休みの静所おとなしアリサ。彼女はとある食堂のテーブルに腰掛けていた。テーブルの上には、紙コップに注がれたビールとモツ煮。時折、モツ煮に箸を伸ばしながら、彼女はジッと新聞を読んでいた。新聞の名は、『南競なんけい』。そう、彼女は今、京王閣競輪場にいる。南競なんけいは、そこで売られている競輪専門予想紙だ。

 京王閣競輪は、京王相模原線・京王多摩川駅を降りてすぐの競輪場。そこは数々の名勝負を生んだ競輪場であり、アリサにとっても、首都圏の競輪ファンにとっても馴染み深い場所である。


 今日はFⅠ・ナイター開催が行われている京王閣競輪場。本場でのレースはナイターのため、十五時以降にレースが始まる。しかし、京王閣競輪場では午前中から岐阜競輪場で開催されているS級シリーズ(FⅠのこと)の場外発売もしていたので、アリサはその段階からここを訪れていた。


 時刻は十七時を過ぎ。もうすぐA級の初日特選が始まる。アリサの手元には投票用のマークシートが無造作に置かれている。しかし、次のレースはスマホの民間ポータルサイトから投票しよう。アリサはそう考えていた。

 季節は秋。十一月なり、いよいよ今年最後のGⅠ・競輪祭がアリサを待っている。その前に、軍資金を地元のレースで稼がなくては。呑気にそんなことを考えていた彼女だが、不意にテーブルの反対側の席へ誰かが座った。


 競輪場内の食堂において、全く見ず知らずの人と相席をするのは珍しいことでもない。そのため、特に気にもしていなかったアリサ。が、相席をした人物が突然話し掛けてきた。

「久しぶりだな、小娘」

 その声を聞いて、アリサは酔いが一気に醒めた。反射的に目の前を見たアリサ。そこには見覚えのある老紳士がいた。

 アリサと目が合い、嬉しそうな表情を見せる老紳士。

「競輪の神様・・・」

 アリサは持っていた割り箸を落としてしまった。

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