出会い

いつもの部屋でまた暴力をうける。もう痛みすらまともに感じず、ただ只管に相手の気が済むのを待つだけ。今日もそうしていると、不意に扉の外が騒がしくなった。僕に暴力をふるっていた人は出ていき、部屋の中は静かになった。



どれくらい時間が経ったのだろうか。暫くして喧騒はやみ、やがて、足音が近付いてきた。また誰かがストレスを発散しにきたのだろう。最近は稀に与えられるご飯も減ってきていて、身体に力が入らない。寝ていることも多くなったし、もうすぐ死ねるのだろうか。この生活を続ける中で、何度も死にたいと思った。死にたいのに死ねなくて、自分を怒りのはけ口にしてくる人達に、いっそ殺して欲しいと何度願っただろう。

意識が沈んでいくのを感じていると、足音の主が部屋に入ってきた。顔を見る元気も出ず、ただじっとしていると突然、身体が浮いた。抱き上げられたのだろうか。久しぶりに感じる人の体温が心地よくて、僕はまた、意識を手放した。

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