第58話 猫貴族、ダンジョンに挑戦する


「儂以外の全員が闇属性とは、まぁなんともけったいなパーティじゃのぅ」


今は男爵領にあるダンジョンの一階フロアに入ったところだ。

あれからなんの問題もなく1日半かけて昨日ここへ辿り着いた。

到着した昨日は冒険者ギルドへ行って情報を集めたり、ティアとじいちゃんの冒険者カードを作成したりした。


「成り行きで集まっちゃったから仕方ないよね」


「まぁ話には聞いておったし、ヴィクターがかなり出来るのはヒシヒシと感じるから文句はないがのぅ」


「でも次にパーティメンバーが増えるなら別の属性の人がいいなぁ」


「光や水の人がいると全然違うもんね」


「クリスやアンナにパーティに入ってくれと言う訳にはいかないから光はなかなか難しそうだけどね」


「お二方、そろそろお出ましのようですぞ」


ヴィクターに声を掛けられて奥を見ると、リザードマンが二体こちらへ向かってやってきていた。

事前に冒険者ギルドで聞いた情報によると、このダンジョンはやはりリザードマンが多く出るダンジョンらしい。

今までの二つを見てもそうだったけど、魔力溜まりは一つにつき一種族を生み出す?かどこかから呼び出しているかのどちらかなんだろう。

そして住み着いたリザードマンが繁殖を繰り替えし、大量のリザードマンがいるダンジョンが完成するようだ。


「ここは私にまかせて。いくよマール」


「ん。わかった」


『タークウィップ』


ティアがマールと力を合わせ何もない所から闇の魔力で鞭を作り出す。

2m程で棘がいっぱいついているなんとも禍々しい真っ黒な鞭だ。

普通、無から作り出すのは非常に難しいのだが、マールと力を合わせれば出来るティアの物理攻撃手段らしい。


ティアがこちらへ向かってきたリザードマン一体の足を絡めとり体勢を崩す。

それに対し、もう一体のリザードマンが槍を手にティアへ突っ込んでくる。

槍でティアを突こうとした瞬間に三つの『ダークウィップ』がリザードマンを襲う。


「グガッ」


なんとか避けようとしていたリザードマンだったが、二つはかすり傷で済んだものの最後の一つが腹部を貫く。


『ダーク』


リザードマンが絶命したことを目視で確認したティアは倒れていたもう一体に対し、『ダーク』をかけ、視界を奪う。


『黒薔薇』


ティアが鞭をふるうと、まるで鞭に意思があるかのようにリザードマンの全身を黒い棘が包んでいく。

そして全身を切り裂き、黒い枝の上に真っ赤な血が華を咲かせる。

なんて恐ろしい技だ。

鞭が薔薇っぽいだけかと思ってたら相手の血で薔薇を咲かせるなんてとんでもないぞ…。

なんだかどんどんティアがおっかなくなっていく気がする。


「やりおるのぅ」


「精霊とのコンビネーションも抜群ですな」


「やったね!マール」


「ん。疲れた。魔力欲しい」


とても眠そうなマールがふらふらとこちらへ飛んでくる


「ん。魔力ちょうだい」


「僕かーい!ティアが疲れてるみたいだから仕方ないね。ほら」


10cm程の魔力の球を放出し、マールに手渡す


「ん。流石はクロエ様の契約者。美味」


マールは僕から受け取った魔力を両手で抱きかかえ、美味しそうにほうばっている。


「それはどうもありがとう?」


「なんだかマールを取られたみたいで寂しいな」


「いやいや、夢中で食べながらもちゃっかりティアの肩の上に戻ってるじゃん」


「ん。やっぱりティアが一番」


「そろそろ先へ進もうかのぅ」


その後も散発的にリザードマンたちは現れたが、僕とティアが中心となって倒していった。

そして気が付けば五階層まで到達し、今日はここで野営をすることになった。


「これで2/3は進んだね」


冒険者ギルドによると今までこのダンジョンで最も深く潜ったのは八階層らしい。

7階層あたりから敵の数も質もかなりあがるため、八階層以降へ進むことは困難でそれ以上何階層まであるか不明だそうだ。


『この感じだと多分十五階層くらいまでしかないにゃ』


「そうですな。やはり若いダンジョンということもあって魔力がそこまで充満しておりませんな」


クロエとヴィクターの話によるともう折り返し地点には来ているらしく、早ければあと二日で最下層へ辿り着くのではないかとのことだった。


「じゃあまずは儂とティアで見張りをするから、ルークたちは休め。でないと明日に響くぞ」


「わかったよ。じゃあよろしくね。おやすみ~」


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