第56話 猫貴族、家族会議をする 前書き編集


「それで儂の大剣を真っ二つにしたあの魔法は一体なんじゃ?それにコートも!無詠唱もそうじゃ!あぁもう聞きたいことだらけじゃ!」


屋敷の応接間へ移動し、皆が席についたところでじいちゃんの怒涛の質問攻めが始まった。

なんだか初めて会った人に毎回質問攻めにされてる気がするな~。

自動で答えてくれる便利な魔法ないのかな?

なんてぼーっと考えていると


「あら?自己紹介が先でしょう?落ちつきがないわね」


じいちゃんもまずいという自覚があったんだろう。

おばあさまの一言できまずそうに口を閉ざした。


「じゃあ私からね。私はメリア・ロッソ、そこに座ってる図体だけが大きい男グレンの母親よ。さっき見たからわかると思うけど、属性は氷よ」


当主なのに端っこの席に座らされ小さくなっている父さんが名前を呼ばれた時にブルっと震えている。


「儂はゼファー・ロッソ、先代の当主じゃ。属性はそこで震えとる二人と同じで火じゃ。ぐわぁはっはっはっは」


その後はこちらの家族でじいちゃんとおばあさまが知らない姉さん、ティア、僕の自己紹介をしていく。


姉さんはおばあさまが“あら?フェリシアはどれぐらい出来るのか楽しみね”と新たな獲物を見つけた肉食獣のような目で見られ、顔を真っ青にしていたのでご愁傷様と心の中で手を合わせておいた。


「あら?ティアはなんだか魔力が独特ね。これは仕込み甲斐がありそうだわ。ルークは良い子を見つけたわね」


おや?なんだか高評価みたいだ。

まぁティアは可愛くて素直で頑張り屋さんだし、精霊と契約している上に可愛いからその通りだよね。


そして最後にせい!と言われた僕の番が回ってきたので、漆黒魔法やこれまでのことを一通り話す。


「なるほどのぉ、漆黒魔法か。通りで強力な訳じゃ。じゃがまだ戦闘経験が足りんのぅ。最後なんて儂を殺ったと思って気を抜いたじゃろ?あんな油断をしてるようじゃ強敵には勝てんぞ」


「そうねぇ。でも漆黒魔法を持っていることを差し引いても、8歳であの手数に動きは良く鍛えられていたわ。どこかの馬鹿二人と違ってね」


もうやめてあげて!父さんと兄さんのライフポイントはゼロよ。

ほら言わんこっちゃない。二人ともさっきの氷魔法を思い出したのかまた震え出してしまったじゃないか。


「ところで僕も聞きたいんだけど、じいちゃんの使った魔纏?と漆黒魔法を相殺したあの魔法何?」


「そうだ!引退して出て行った時はあそこまで化け物みたいな魔法は使ってなかったはずだ!」


「あれは二つとも今回の旅で儂が会得した奥義じゃ。あれは獣国からドワーフの国へ向かう境の森じゃったのう。そこでめちゃくちゃ強い鳥と出会ってのぅ」


じいちゃんが楽しそうにその時の話をし始めてくれた

しかし、肩にいるクロエがなんだかソワソワし始めた


「懐かしいわね。たしか“おい、お前ら強そうだな?相手しろよ”だったかしら?」


「そうじったのぅ。儂ら二人も強さには自信があったから倒してやろうと戦ったんじゃが…」


「手も足もでなかったわね」


ばあちゃんの手も足も出ない宣言に、部屋にいた全員が驚きを隠せない。


あっさっきばあちゃんから他人行儀におばあさまなんて呼ばなくていいわよと許可をもらったから、じいちゃんと同じくばあちゃんと呼んでいる。


「じゃが見込みがあるし、面白いとなにやら気に入られてなぁ。そこからはあやつに勝つために三人で修行と決闘に明け暮れる日々じゃったわ。そんな中でどうにかもっとはやく動けんかと思案しておる内に魔纏が出来るようになったのじゃ」


はじめは足に魔力を集中させ、火の爆発力を利用しての高速移動からはじまり、順に腕、頭と最後には全身一気に出来るようになったらしい。


「3年程経った日じゃったか?二人でようやく一撃あてられての。それにいたく気に入ったようで、儂らのどちらかに契約せんか?と持ち掛けてきおったのじゃ」


「ゼファーに契約を勧めたんだけどね。この人“儂一人ではいかん。今回の成果はメリアと二人で出したものじゃ”って譲らなくてね。ウフフフ」


あれ?なんだかじいちゃんとばあちゃんの周りがピンクな空気になってきたんだけど。


「そしたら“では我の加護をやろう”と言われてのぅ。それからじゃ魔法が強力になり、魔法名すら唱えずに魔法が使えるようになったのは。ただ無詠唱は出来んがな。ぐわぁはっはっはっは」


でも加護か。そんなの普通の魔物に出来ないよね?


さっきからソワソワしてるしこれは間違いなさそうだね


(ギクッ!あたしもまだ確信はないのにゃ)


ギクッって声に出ちゃってるよ。


でもやっぱりそうなのか。


通りでめちゃくちゃ強いし、漆黒魔法が相殺されるはずだよ。


『ちょっといいかにゃ?そのめちゃくちゃ強い鳥ってまさかフェニックスだったりしないかにゃ?』


「おう、そうじゃ!フェニックスと言っておったぞ」


まさかのじいちゃん・ばあちゃんが神獣の加護持ちだった件。

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