第54話 不審人物と戦う


「おっ!お前の方がやりそうだのぅ。どれかかってこい」


「なぜこんなことをする!」


「なぜ?そんなの決まっておるじゃろう。暇潰しじゃ。まぁこやつでは暇潰しにもならんかったがのぅ」


兄さんに一瞥をくれ、堂々とそう言い切った男に対し、転生して初めて怒りが爆発した


「…楽に死ねると思うなよ。ティアは父さんたちを呼びに行ってくれ」


「わかった。ルーク君、負けないでね」


『付与・漆黒』


「はぁぁぁ」


僕は死神の双剣に漆黒の魔力を纏わせ、男へ切りかかった。


「ほぉ、付与か。なかなかやるのぉ。じゃがそれで儂に傷を…ッぐ、なに?」


男は僕の双剣による攻撃を大剣で受けようとしたが、双剣が纏っているのは漆黒魔法だ。

男の大剣が双剣を受けた辺りを中心に消滅し、ぱっくりと二つに折れる


「なんじゃと!儂がようやく手に入れた大剣が!こりゃあ思ってたよりやりおるのぉ」


そう言いながらもどこか余裕を残しながらこちらを伺う男に対し、僕は怒涛の攻撃を続ける


『漆黒魔球』


「そいつもまともに受けるとヤバそうじゃのう」


『魔纏・炎鎧』


「ふんっ」


魔纏という聞きなれない呪文を唱えた瞬間、男の周囲の気温が爆発的に跳ね上がり、体中を真っ赤な炎の魔力が覆う。

そして、【漆黒魔球】が右腕あたりにあたるが、炎を消滅させただけで奴の体は無傷の様だ


(まるで炎の鎧だ。なんとかあれを剥がして攻撃を入れないと今の僕だと、いくら漆黒魔法でもダメージを与えられそうにないな)


「考え事か?まだ余裕がありそうじゃのう?」


そう言いながら先程の折れた大剣にも炎の魔力を纏わせ柄より先は魔力剣と化した大剣でこちらに攻撃をしかけてくる

しかも炎の鎧を纏ってからの奴は身体能力も大幅に上がったようで、先程までと比べ物にならない。


「くっ」


速さに仕切れず一撃を受けてしまったが、死神のコートのおかげでなんとかダメージは受けずに済んだ。


「なんじゃそのコート?そいつも特別製か!益々おもしろい奴よのぉ。こいつでダメなら魔法でいくかのぉ」


その様子を見た男は獰猛な笑みを浮かべ、楽しそうに大剣を脇に投げ捨てる


(このままじゃまずいな。相手はまだ余裕がありそうだし、なによりあの炎の鎧が厄介だ。なんとかして隙を作らないと)


『漆黒魔球』


「またそいつか!鬱陶しいのぉ」


『紅朱雀』


ジュドーンという鈍い音とともに魔法をぶつけられ、魔法が相殺される


(なにっ?漆黒魔法が勝てなかった?どうゆうことだ?まあいい本命は次だ)


魔法のぶつかり合いに気がいっている相手に対し、ここで切り札にとってあった無詠唱で魔法を発動させ、奴の影から漆の魔力で形成された【常闇太刀】を相手に放つ。

これはティアがオークに使った【シャドーエッジ】の強化版で、陰から音もなく放たれる漆黒の刀が相手を切り裂く必殺技だ。


(よし!殺った!)


「なにぃ?影からじゃとぉ?」


ギリギリで刃に気付いた奴が相殺しようとし爆炎を放つ。


「ふぅなんとか勝て『惜しかったのぉ』」


「っなに」


爆炎で奴の姿を見失った一瞬のうちに背後に回り込まれ、僕の首筋には手刀があてられている。


(いつの間に!全く気配も感じなかった)


「くっなぜ殺さない?」


「なぜじゃと?それは儂が『あぁやっぱり!』」


「おぉようやく来よったか!久しぶりじゃのぅグレン」


「何呑気に挨拶かましてくれてんだ!なんだこの惨状は!父上!」


「え?父上?もしかして…じいちゃん?」


「そういうことじゃのう。ぐわぁはっはっはっは」

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