第22話 猫貴族、奇妙な本と出合う

王都の城門では中に入るための順番待ちの列が出来ていた。

あれだけ待つと何時間もかかるだろう。

本でも読んで時間潰そっかな~なんて思ってると、貴族は専門の門があるため、ほとんど待たずに王都へ入ることが出来た。


王都に入ると、奥に白くそびえ立つ巨大な城が目に入った。あれが王族が住むビヤンコ城だろう。

その王城の手前にある屋敷へ向かうため、僕たちの馬車は貴族街へ入った。

辺境伯家は侯爵家と並び上から2番目の爵位になるため、王城にかなり近いところに屋敷が構えられていた。


屋敷に到着すると、どこかで見たことのあるような執事が出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ。旦那様、奥様、ルーク様」


「あれ…?セバス…さん?」


「いえ、私はセバスの息子のウォルターと申します。王都の屋敷の管理を任されております」


なんと辺境伯領の屋敷で兄さんの隣で苦笑いを浮かべていたセバスの息子だった。

あまりにも似ているため、一瞬どこかで追い抜かれたのかと思ってしまった。


「フェリシアお嬢様が中でお待ちです」


父さんがうむと言って中へ入っていくので付いていく。

自分の家だと言われても初めて訪れたので、なんだか不思議な気分で屋敷の中を観察した。

リビングでは10歳になって少し大人っぽくなった姉さんが僕たちを待っていた。


「お父様、お母様、ルーク、久しぶりね。」


「フェリシアも元気そうだな。今日は学園は休みなのか?」


「久しぶりね。学園では勉強頑張ってるようね~」


姉さんの話によると今日は午前で授業が終わりなのだそうだ。

昼から時間があるので僕を街へ案内しようと待ち構えていたようだ。

しかし、今日は着いたばかりで休ませてほしいと言うと、プンスカしながらも次の週末には街へ一緒に行くことを約束することでなんとか納得してくれた。


次の日はクロエを肩に乗せ、護衛とともに朝から王都の散策に出ていた。

姉さんは今日は学園を休もうかしらなんて世迷い事をのたまっていたが、母さんに宥められ、渋々学園へ向かっていった。


(今日はどこへ行くのにゃ?)


(まずはふらっと街並みを見てみようかな。あとは珍しい物がないか探してみようかな。クロエはどこか行きたいところはある?)


(美味しい物が食べたいにゃ。)


クロエが食べ物が見たいというので、まずは市場へ向かった。

辺境伯領では見ないような香辛料や魚など珍しい食材がたくさん並んでいた。

クロエはさっきから目がハートマークとなっていて、久しぶりのお魚にゃと一心不乱に魚にかじりついている。


市場も一通り見終わったので、次は武器屋にでも行こうかと歩いていた時、メイン通りから一つ入った道にある少し古びた店が気になった。

店に入ると、見た目通り古さは感じられるものの、商品は綺麗に並べられていた。

どうやら雑貨屋さんのようだ。


「ひゃっひゃっひゃ。こんな店に客が来るなんて珍しいね。何しに来たんだい?」


奥から腰の曲がったお婆さんが現れ、声を掛けてきた。


(不快感はないんだけど、なんだかこのお婆さん違和感あるんだよな~。)


(魔眼で見てみるといいにゃ)


クロエに言われるがまま魔眼に魔力を込めると


「え、耳が長い!!もしかしてエルフ?」


「ひゃっひゃっひゃ。まさか隠蔽が効かぬとはの。坊主、店の入り口を閉めな」


慌てて入り口を閉めお婆さんと再び向かい合うと、お婆さんは綺麗な金髪に長い耳のエルフへと姿が変わっていた


「隠蔽が見抜かれるなぞ久しぶりじゃの。坊主、何者じゃ?」


姿がエルフになったにも関わらず、相変わらずお婆さんのような話し方で話してくるので違和感しかないが、ただの貴族家の次男だと告げる。


「ロッソ辺境伯家か。確かネーロ公爵家の娘が嫁いでおったの。それで坊主には効かんかったのやもしれんの。この隠蔽の魔道具は闇魔法を使っておるからの。」


「ところでお婆さんなの?どうしてお婆さんの姿に隠蔽していたの?」


「レディに年齢を聞くとはマナーのなってない坊主じゃの。ひゃっひゃっ、わしは坊主が思っとる何十倍も生きておるとだけ答えおこう。エルフは見目麗しいものが多く、狙われることも多いのじゃ。この国ではそんなことも起きぬとは思うが、面倒に巻き込まれんよう姿を変えておる」


そのまま世間話をいくつかした後、店の商品を見せてもらうことにした。

なにやら怪しげな杯や、杖、何かの骨などありとあらゆる物が置かれていた。


「おや、その本が気になるかの?隠蔽を見破った褒美に持って帰ってもよいぞ」


この本は大昔に遺跡の中から発見されたそうで、普通の本ではないと感じ、店に置いていたものの、売れる気配もないからくれるというので貰うことにした。


「久しぶりに楽しかったわい。また来るがよい」


こうしてエルフのお婆さんことエル婆の店を後にした。

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