第18話 猫貴族、ロッソ辺境伯領へ帰還する

ティアへのプロポーズは無事に終わり、家族のみんなからも祝福してもらった。

クリスタさんなんかはやはりお義母さんと呼びなさいと言ってくれるのでクリスタお義母さんと呼ぶことにした。


その後は家族で今後の王家や貴族との対応を話し合った。

基本的に漆黒魔法や神獣、精霊のことは隠し、婚約も8歳の学園入学に合わせて発表することに。


そして今日はいよいよロッソ辺境伯へ向けて帰還する。

ティアとは今後は手紙を送る約束をし、精霊石の様子についても知らせてくれることとなった。


「また寂しくなるが気をつけてな」


「お爺ちゃんたちも身体に気をつけてね」


お爺ちゃんやティアたちに別れを告げ、馬車へ乗り込んだ。


「色々あった一週間だったな」


「本当ね~。最後にはまさかの精霊ですもんね」


「何も知らなかった私としては、漆黒魔法やクロエのことなど驚くことばかりだったわよ」


「なんだか責められてるような気がするのは気のせいだよね?」


「気のせいよ。あんな可愛い子を婚約者に貰ったんだから大事にしなさいよ」


行きと同様、いやそれ以上に和やかな空気で馬車は進んでいた。


そしてそろそろネーロ公爵領を出ようかという時に僕の魔眼が前方の林の中に多数の魔力反応を捉えた


「父さん!前の林の中から複数の魔力反応がある!これって普通のことなの?」


「なに!?よくこんな遠くからわかったな。具体的な人数と場所はわかるか?」


「左右の茂みに3人ずつと、木の上にも3人ずつの12人だね」


「ルークが言う通りなら盗賊かなんかだろう。スペンサーに伝えてくる。」


「ねえ母さん、こんな所で盗賊なんて出るの?」


「ネーロ公爵領で盗賊なんてほとんど出ないはずなんだけどね。なんだかきな臭いわね」


母さんと話している間に父さんはスペンサーと話し合いを終えたようだ。


気付いてないふりをして接近し、先制攻撃をしかけるとのことだ。


そしていよいよ馬車が林へ差し掛かった時、木の上から複数の魔法が馬車目掛けて放たれた。


しかし、それはスペンサーがあらかじめ発動していた風の防御魔法で弾かれた


「やはり賊だ。作戦通りまずは木の上の奴らを打ち取るぞ」


今度は逆にスペンサーの掛け声で騎士団から一斉に魔法が放たれた


「ちっ俺たちの存在がバレてやがる」

「なんでバレてんだよ」


木の上にあった魔力反応は消えたことから打ち取れたことがわかる。

しかし、まだ茂みに隠れていた6人は残っている


「一番隊は左側を、二番隊は右側を討ち取れ!」


こちらは護衛の騎士は数も多く、その甲斐あってみるみるうちに盗賊の数は減っていった。

そして残すところあと二人となり、騎士団が生け捕りを試みようとしていると


「作戦は失敗か。せめて一人でも!くらえ!『ウォーターボール』」


リーダー格の男はいきなり馬車の前に備えていた父さんに向けて詠唱破棄で魔法を放ってきた


「グレン様!危ない」


「そんな魔法が俺に届くと思ってんのか」


『エンチャントファイヤ』


そう言いながら父さんが炎を纏ませた剣を縦に振り下ろすと、相手の魔法は真っ二つに別れて消滅した。


「馬鹿な。これがクリムゾンナイトの力か」


父さんの実力に盗賊が呆然とした瞬間に、一斉に騎士たちが飛び掛かりリーダー格の男ともう一人を無事に捕縛した。


「何か裏があるはずだ。何としても吐かせろ。間違っても自害なんてされないようにな!」


指示を出し終えた父さんは馬車へ戻ってきた


「どうして裏があるとわかったの?」


「俺の火に対し、水の魔法使いが送り込まれてきたことがまず怪しい。それに詠唱破棄なんて出来る奴が盗賊になるなんて明らかに不自然だ」


確かに話を聞いていると、ロッソ辺境伯家を狙った刺客で間違いなさそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る