ようこそ、勇者御一行様!

矢口ウルエ

プロローグ 村にて

スピカは緊張していた。

今日は王都からの招集を受けた日だからだ。


つい先日、この村に王都からの使いの者が来た。スピカの住んでいる村は小さな村で、王都からもかけ離れていたため王都からの使いが来ることは滅多になかった。

それどころか、魔族と呼ばれる者たちと共存しているためどちらかといえば忌み嫌われていた。

「スピカというものはいるか!」と王都の使いはスピカを呼び出した。

「は、はい!私がスピカです・・・」

「グラント王からの命により、3日後城に来るように」そう言うとスピカに勅命書を手渡し、村をあとにした。


その日村は大騒ぎだった。やれ、村がついに王から認められただの、スピカが王都で働くことになっただの。反対に村が王都から目を付けられついに壊滅させられるなど様々な噂が流れた。実際、スピカの元に届けられた勅命書には詳細は書かれておらず、日時と場所のみ書かれていた。

「ついに我々の村もグラント王から認められたのだな」

スピカの父は誇らしげにしながら夕食を食べ始めた。スピカの家は代々村の村長をしており、スピカも父の跡を継ぐことになれば村長となる。

「王都では我々の村を忌み嫌うものが多い。だが、グラント王から次期村長が呼ばれたということはこの村も認められたも同然。安泰ということだな」ガハハと大きな声を上げて父は酒を飲む。

「まだ何の事で呼ばれたのかわからないですし、あまり期待しない方が良いのではないですかお父様」スピカは不安な表情で父に問う。

「何を言っているスピカよ。お前はこの村一賢いのだが心配性すぎるな。もう少し自信を持たないとこの村は任せられんぞ。ワシが若いころはな・・・」

「まあまあ、お父さん。スピカも王都へ向かう準備がありますしこの辺にしておいてはいかがですか?スピカ、王都への道のりは長いのだから今日はしっかり休んで準備しておくのよ」母が暴走しかけた父を止める。

「そうだな。明日も早いのだからそろそろ寝る準備をするとしよう」


スピカは呼び出された理由をあれこれ考えながら布団へ潜った。

なぜ急に王から呼び出されたのだろう。その答えはいくら考えても出てくることはなかった。しかし、村で囁かれる良い噂も悪い噂も、答えはその中には無いような気がしていた。村を認めようが、滅ぼそうがわざわざ王が村長の息子を呼ぶとは思えなかったのだ。いくら考えても出てこない答えに疲れスピカは考えるのをやめた。当日になればわかるだろう。不安と期待が入り混じった気持ちを抑えながら眠りに落ちていった。




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