第10話 長い眠り

目覚めるとなにか空間に眠っていたようだ。


(あれ?俺は翔子と水上を助けて倒れたっけな)


ここに至る前の出来事を思い出しながら立とうとして起き上がると、頭に激痛が走って再び地面に伏した。


『おとうさん、てすとでまんてんとったよ!』


『おかあさん、せんせいにてすとのことでほられたよ』


『おとうさん』


『おかあさん』


『どうしてむしするの』


『・・・がんばったのに・・・』


『まだ無視するのか』


『俺はなんのために生まれてきたのか分からない』


『・・・今日も家にいないな』


『今日は500円だけか』


『今日は300円に変わったのか』


『200円でどうやって過ごそう・・・』


『パン一枚でどうやって膨らませるか』


『今日の水は塩味にするか、コンソメにするか迷うなぁ』


『この野草なら可食で・・・』


『昆虫は揚げればなんとかいけるかもな』


『炭、小石、清潔な砂と綺麗なペットボトルがあれば、雨水が飲めるぞ』


『MR.Gは流石に美味くはないよねぇ・・・』


『小石を煮沸して・・・梅干しを想像すれば・・・』


小学校が懐かしいなぁ


『お、俺?』


『しゃ、舎弟ですか?』


『姉御?!しっかりしてください!!』


『舐めた真似をしやがって・・・』


『自分の女から目を離すんじゃねぇぞ!!』


『この傷・・・治るのか』


『おらぁ!!!どこのどいつだ!死にてぇやつは!!!』


『うちの連中に手を出して無事で済むと思うなよ』


『危ない・・・10位以内から落ちるところだった・・・』


『高校を卒業すれば俺は自由になれる』


『バイトはどこがいいんだろう』


中学も給食が残って助かったなぁ


『転勤?』


『バイト頑張るぞ』


『初給料・・・やったー!』


『今は仮初の自由だが、いつかは・・・』


『自分は大学に行くつもりはありません』


『とにかく、就職しか考えておりません』


『大学校ですか・・・少し考えてみます』


『今月の光熱費は・・・もう少し削れるな』


『食費はもう少し頑張って遠い業務スーパーに行けば減らせるな』


『税金って、世知辛いなぁ』


『この資格は良さそうだな。とってみるか』


『あそこのボランティアはご飯が出るのか・・・』


『大学校の資料請求しなきゃな』


『今度の土日で地本に行って話を聞いてみるか』


ああ、僅かな希望が俺の糧になっていたな。


過去の記憶が一気に頭の中を駆け巡ったせいなのか激しい頭痛が俺を襲ったらしい。


激痛に悩まされていると何故か液体のようなに浸っている間隔が俺の身体全体から感じる。


まだ残る頭痛のせいで動きが鈍いながらもなんとこ立ち上がって、周りを見渡すと目の前に川があった。


それも綺麗な青色をしており、対岸には人も歩いていている。


そして、水深が浅いのか渡っている人々もいる。


(向こう側に何があるんだろう)


そう思うとすぐに川渡りを始めたが、何かが俺を阻んでいて水深が急に深くなる部分もあった。


浅いところに一旦戻って、渡る方法を考えてみた。


だが、思考は頭痛と新たな痛みによって中断されて意識をここで失った。


(もう少しで楽になれるんだ・・・)

































「不味い・・・心肺停止です!!」


「電気ショックの用意!!」


「何回目の心肺停止だ?!」


「生きているのが奇跡だぞ」


「もう1か月も目を覚ましていない」


「まだ連絡つかないのか」


「これは警察に相談した方がいいかもしれない」


続く?

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