第10話 お香・耳鳴り・ポルターガイスト

勝負は夜明けの朝日迄。


それまでに幽霊が恒樹から離れ、部屋から追い出し、そして玄関に盛り塩をして入ってこられないようにする。


恒樹にはとことん幽霊が憑きにくい状態にして部屋はとことん幽霊が居心地の悪い空間にしていく。


準備が終わった時点でお香が消えていた。


だいたい15分くらいになるようにお香を折って調節しておいた。


充満させて換気を出来るだけ多く繰り返すためである。


次のお香に火を点けようとしたら少し手が震えていた。


緊張するとすぐに手が震える。


だけど緊張するのは嫌いじゃない。


昔から緊張すると集中力が上がっていつも練習のベスト近くかそれ以上の結果が残せる。


「よし、悪くないな」


そう呟いて部屋を15分で充満させるのに十分な量のお香に火を点けた。


換気のために窓を開けたので窓の近くの蝋燭が消えた。


蝋燭をつけ直し、部屋のあちこちにお香をおいて、恒樹の背後に座った。


眼を閉じて集中して心とからだ一杯に怒りの感情を作る。


体中に流れる気をイメージしてそれが喉に集まるように意識する。


目一杯息を吸い込んでありったけの声で吸い込んだ息を一気に吐きながら集めた気を部屋中に叩きつけるように


「破ぁっ」


と怒鳴った。


その瞬間恒樹の体がぐっと前に押されたように動いた。


肩を叩かれるまでアイマスクやヘッドフォンをはずさないように言っておいたので、そのまま座り続けている。


ずいぶん前にネットでみた洗心術をかれこれ3~4年もやっている。


今ではしないと気持ち悪いくらいだ。


まさかそれを実際に使う日がくるとは思わなかった。


使える日と言った方が良いだろうか?


もう一度集中する。


その最中に


バンッ‼


とまたベランダの方から音がした。


ポルターガイストかな?


幽霊が嫌がってるならこのまま続けていいはず。


眼を閉じてそのまま集中を続ける。


そしてもう一度


「破ぁっ」


と怒鳴った。


周りを見るとベランダの窓際に吊るしたフーチが揺れている。


他は揺れていない。


締め切っているので風はない。


これはもしかして?


お香が消えていた。


(二回集中すんのに、15分以上かかってんのか)


心で呟く、時計を見ると3時5分。


夜明けが今の時期5時10分頃、後6~7回お香を焚いたら夜明けか。


(それまでにいけるかな?)


換気をしてもう一度お香を焚きなおす。


恒樹の背後に座りまた集中する。


今度は右耳が痛いほど耳鳴りしだした。


こっちかな?


そう思い耳鳴りのした方に向きを変えて


「破ぁっ」


と怒鳴った。


耳鳴りが止まった。


間違いなく効いてるな。


ガタンッ


真後ろから音がした。

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