第5話 除霊失敗


次の日、起きると恒樹からラインが送られてきていた。


「昨日の夜中に目覚ましたら金縛りにあったっす‼」


という文字と共にガックリとうなだれたスタンプ。


「まじか、なんでや?」


独り言を言いつつ電話をかける。


「おざっす。昨日、帰ってから言われたこと全部やったんすけど、なんでっすかね?」


少し声が沈んでいる。


アドバイスの中に何かしてはいけないことが

あったのだろうか?


いや、思い返してもまずい部分は浮かばない。


「当たり障りのないことしか言ってないけどなぁ・・・」


「人生初の金縛りっすよ! なんか悪なってません?」


確かに、でも考えていてもよくわからない。


見て確かめるしかなそうか?


「ん~、そーいや掃除やらなんやらすんのに

嫁さんにはなんて言ったん」


「しゃーないから事情説明しましたよ」


「何て言ってた?」


「私も行きたかったって」


「まじか」


そんなにイカれた嫁さんだったっけ?


「冗談っすよ。まぁしょーもないことせんといてみたいな感じっすね」


しょうもない冗談言ってる場合か、という言葉は呑み込んだ。


嫁さんも事情を知ってんのか、なら行っても問題はないかな?


「そっか、とりあえず今日の夜お前んち行ってみよか?」


「いいんすか? なんかすんません」


「乗り掛かった船って感じやしな、まぁ行って分かるかどうかは微妙やけどな」


なんせ霊感はゼロだ。


あるのはオカルト知識だけ。


「アザっす」


「駅で待ち合わせにしよか」


「了解っす。仕事終わったら連絡しますね」


「はいよ」


電話を切った。


「なんやったん?」


明子が聞いてきた。


「除霊失敗、金縛りやて。今日恒樹の家行ってきていい?」


「ちゃんと神社とかお寺行った方がいいんちゃうん?」


ごもっとも。


「そーやなー、でももうちょい首突っ込んでみたいんやけど?」


「物好きやな、顔に絶対行きたいですって書いてあるで」


明子には大体おみとうしである。


「助言するまでにするから」


「そらそうやろ、除霊なんかできんやないか」


私は頭の中であわよくば試してみようと思っていたことは言わないでおいた。


「ほんじゃ、ごめんやけど今日もちょっと遅くなるわ」


「んー。気を付けてね。行ってらっしゃい」


家を出てバイクに股がり恒樹との会話を思い出す。


冗談を言う余裕はあったし、やっぱりそこまで深刻ではないんかな?


あれこれ考えながら職場に向かった。

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